工場を実況見分する群馬県警 (c)朝日新聞社 @@写禁
工場を実況見分する群馬県警 (c)朝日新聞社 @@写禁

 昨年末に発覚したマルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」の群馬工場で製造した冷凍食品から、農薬「マラチオン」が検出された問題だ。

 誰が、何の目的でやったのか、多くのナゾが残る中、解明に向けて大きく動き出したのは年明け7日のことだった。

 農薬の混入が確認された「冷凍コロッケ」の衣部分から、残留農薬基準の260万倍に当たる2万6千ppmのマラチオンが検出されていたことが、同社の説明で明らかになった。

「重要なのは、どの段階で農薬が混入されたかです。マラチオンは熱に弱い。製品の袋に穴も開いていなかった。そうなると、加工後から包装されるまでの間に何者かが農薬をかけたと見て間違いないでしょう」(捜査関係者)

 その“犯行場所”として疑いが強まっているのは、工場内にある「包装室」だ。マラチオンが検出されたコロッケ、ピザ、フライの7商品9パックは、3本のラインで製造され、最終的にこの部屋で包装される。

 部屋に仕切りはなく、81人の従業員が2交代制で作業に当たっていた。

「作業着にはポケットがなく、室内に農薬を持ち込むのは無理」と、自分たちの犯行を否定する従業員がいる一方、グラタン製造を担当する従業員からは、こんな声が聞かれた。

「持ち込もうと思えばできますね。作業着の袖の下に隙間がありますから。そこに入れることもあり得るかなあと。入室の際の所持品検査もないので」

 20代の男性従業員も、「作業着の下は私服です。ポケット付きの服を着て、そこに何かを隠すことも可能ですね」と語った。

 また、福井県立大学生物資源学部の吉岡俊人教授は、あくまで推察と前置きした上で、こう話す。

「マラチオンは一般的な農薬で、ホームセンターなどで100ミリリットルの瓶に入って売られています。そのままだと目立つので、スポイトで吸い、それを服の中に隠して工場内に持ち込むことも考えられるのでは。ただマラチオンは、臭いがとてもキツい。本当に包装室が“現場”だとすると、他の従業員がいない状態で使ったのではないか」

 犯行は計画的だったのか――。前出のグラタン製造の従業員によると、最近突然退職したり、無断欠勤を続ける従業員は、知る限りいないという。

週刊朝日 2014年1月24日号