AKB48のメンバーとして7年活躍し、2012年の秋以降はSNH(上海)48に移籍して活動している宮澤佐江さん。現在は俳優の岸谷五朗さんと寺脇康文さんによる演劇ユニット・地球ゴージャスがプロデュースする舞台「クザリアーナの翼」で、初めて本格的な舞台に挑戦している。初めての舞台の中で、さまざまな気づきがあったという。

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「もともと歌と踊りがやりたくてAKB48に入ったんですけど、お芝居の仕事もやらせていただく中で、最近になってやっとその奥深さみたいなことに気づき始めた感じがします。たとえば、『はーい』という一言だけでも、イントネーションとか気持ちの込め方次第で、楽しそうだったり嫌そうだったり曖昧だったり、まったく違う印象になるじゃないですか。そういうところが、お芝居ってすごく面白いなぁって」

 いつか自分がAKB48グループを卒業したあとでも、芝居なら続けられるかもしれないと思うようになった。

「でも、地球ゴージャスの舞台って、お芝居だけじゃなく、歌や踊りが果たす役割も、すごく大きいんですよ。だから、たとえ一人になっても歌や踊りを必要とされる場所はあるってことを今回は知ることができました。でもその分、今まで以上に努力しないと」

 06年のデビューから8年近く、数えきれないほどのステージに立ってきたが、「自分がアイドルをやっているっていう気持ちはまったくないんです」と話す。ステージに立つときも、ブログを書くときも、バラエティーに出演するときも、アイドルらしく振る舞おうとしたことは一切なく、常に素の自分をさらけ出している感じなんだとか。

「すごく苦しい思いをしたこともあるし、(AKB48を)辞めたいなと思ったことも、過去には何度かありました。でも、中学のときのバスケ部の顧問の先生に言われたことがあるんです。“一生懸命を楽しめ”って。私の人生で一番の試練は、AKB48の総選挙でも、SNH48への移籍でもなくて、中学のときの部活なんです。あの3年間を乗り越えられたから、それ以降のレッスンもハードスケジュールも、大したことない、って思えるようになった。部活は本当に厳しかったけれど、その顧問の先生のことが大好きで、“この先生についていけば、きっと何かある”って信じて乗り切ったんです」

 以来、“つらいときこそ、楽しんだもの勝ち”ということを肝に銘じながら、いくつもの試練を乗り越えてきた。

「歌であってもお芝居であっても、ステージに立ったら、やり直しがきかないのは同じ。だからいつも“この一回きり”という気持ちで臨んでいます。今回も、意地を見せられたらいいな」

週刊朝日 2014年1月17日号