ドラえもんがのび太を驚かせた「未来の道具」の中には、作品が出た当時と異なり、現在の私たちが似た道具を使えるようになったものもある。

「糸なし糸電話」(単行本1985年刊行)。糸がなくても相手と会話ができる道具だが、掲載の2年後に携帯電話の国内発売がスタート。今では「糸なし」電話は国民の“必需品”になった。

「トレーサーバッジ」(75年)は、電波が出るバッジで、身につけていると、その人のいる場所が小型テレビのような「レーダー地図」に表示される。

 カーナビや最近のほとんどの携帯電話に搭載されているGPS(全地球即位システム)がこれに近い。100円ライターほどの大きさで、電波を長時間発信する小型GPSも発売されているから、そっくりだ。のび太は友達の居場所を把握したくて使ったが、これは、「主に浮気調査用で、妻が夫のカバンにしのばせて、携帯やパソコンで位置を監視している」(私立探偵)のだとか。

「ききがきタイプライター」(86年)は、マイクに向かって話すと自動的に文字をタイプしてくれる。

 今は音声認識ソフトが発売され、パソコンにインストールした後で付属のマイクに言葉を発すると、スラスラと文字のデータにしてくれる。試しにアドバンスト・メディア社の最新ソフトで、「あべしんぞうしゅしょう」と言うと「安倍晋三首相」、「じしゃかぶがい」は「自社株買い」と、正確に記した。

「ICレコーダーを使い、静かな場所で相手の口元で録音した場合、録音の4分の1の時間で正確に文字にすることもできる」(同社販売員)というから、21世紀も負けていない。

「インスタント旅行カメラ」(75年)は、風景の写真と人物を撮影・合成し、あたかもその場所にその人物がいたような写真を撮ることができる。これもパソコンの画像処理ソフトが今は販売されていて、簡単に可能となっている。

「XYZ線カメラ」(76年)は中が見えない箱などに向けてシャッターを切ると、中の様子が写真になって出てくるカメラだ。形状は異なるが、病院のCTスキャンや空港のX線荷物検査機などはこれに近い。患者の自宅にX線カメラを持ち運び、負傷した部位のX線写真を撮ることもできる。

「ハウスロボット」(79年)は家の真ん中の天井につけると家がロボットになり、掃除をしたり玄関の客を居間まで運んだりしてくれる。

 このような至れり尽くせりの住宅は現在、スマートハウス(次世代省エネ住宅)と呼ばれ、住宅各社が力を入れている。携帯電話の遠隔操作で“命令”すると、施錠やエアコンのON・OFF操作などをしてくれる。

 ほかにも毎日、尿糖値などを測定してくれるトイレや、ウイルスを除去するプラズマクラスター内蔵のクローゼットも実用化されている。屋内移動用の電気一輪車の開発も進む。

 ドラえもんの22世紀には、「ハウスロボット」にたどり着いていそうだ。

週刊朝日 2014年1月17日号