1月2、3日の両日に行われる箱根駅伝。今回の注目選手のひとりが、日本体育大にいる、新しい「山の神」候補ともいえる存在だ。今季抜群の強さを見せる駒澤大の大八木弘明監督も、その能力に警戒している。

 大八木監督がレースのポイントとしてあげているのは、2区と5区。

「2区が終わった時点でどの位置につけられるか。そして5区の山上りには、前回の大会で区間賞を獲得して優勝を引き寄せた、日本体育大の服部(翔大=しょうた)君がいます。服部君は強い。ウチとしては、なんとか先頭から悪くても1分以内にゴールして復路につなぎたいですね」

 今季、圧倒的な強さを誇る駒澤大にしても、山上りのスーパースターには警戒を怠っていない。もし、うまく5区をしのぐことができれば、これまで1990年度の大東文化大、2000年度の順天堂大、そして10年度の早稲田大の史上3校しか達成していない出雲、全日本、箱根の「3冠」を達成する可能性は十分にある。今回の箱根は、駒澤大を中心に展開していくのは間違いない。そして対抗馬となりそうなのが、大八木監督が警戒する日本体育大と東洋大の2校だ。

 かつては名門の名をほしいままにしていた日本体育大だが、教員採用数が減少してきたあおりを受け、往年に比べると選手層が薄くなっていたのが悩みの種だった。前々回の12年の大会では1区で2位と好スタートを切ったにもかかわらず、最終10区、大手町のゴールでは史上最低の19位へと沈んだ。

 どん底からの再スタートは、生活環境の見直し、そして体幹トレーニングの徹底などを行い、見事V字回復を達成、今年は実に30年ぶりの優勝を達成した。その中心となったのが、山上りの服部。前回は強風が吹きすさび、低体温症で棄権する選手も出る悪条件にもかかわらず、力強い走りを見せて箱根・芦ノ湖に先頭でゴール。2位の早稲田大に2分35秒、ライバルと見られた東洋大にも2分39秒の大差をつけて優勝に大きく貢献した。

 別府健至監督も「普通に考えれば、山は服部ということになるでしょう」と話しており、駒澤大の大八木監督だけでなく、優勝を狙うチームにとって「服部対策」が重要になる。その服部は、他校の監督が「いまどき、あれだけ“男気”のある学生は珍しい。どんなに差がついていたとしても、自分がひっくりかえしてやるという強い気持ちがある」と絶賛するほど。服部本人も最後の箱根に対する意気込みは並々ならぬものがある。

「今回の箱根に不安はありません。というよりも“自信”しかありません」

 ここまで言い切れる選手は、そうそういない。

週刊朝日 2014年1月3・10日号