猪瀬知事がついに辞職に追い込まれた“徳洲会マネー”騒動。検察の今後の動きについて、永田町は戦々恐々としている。恩恵にあずかった人物として報道された政治家の一人、亀井静香氏に話を聞いた。

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 2008年に「徳洲会」グループから私が2千万円を受け取りながら、政治資金収支報告書に記載していなかったという報道があったが、ぜんぜん違う。2千万円は徳洲会グループの事務総長だった能宗(のうそう)氏からパーティー券代として預かったものだが、領収証を書くため、徳洲会側の出席者名簿がほしいと要求しても、出さなかったので、これ以上、預かれないと12年末に返しただけ。パーティーに徳洲会側は来なかったので、記載する義務もない。俺はね、長いこと政治家やっているんだから、そんな出処のわからないカネなんかもらいませんよ。

 今回の事件は残念だね。徳田虎雄という男は盟友で、誰もがちゃんとした治療を受けられるような病院をつくるという情熱に燃え、国内だけじゃなく、海外にも病院を次々とつくった。昔は地方出張してもホテルに泊まらず、病院の宿直室に泊まる。そんな男だから、私財を蓄える気はゼロだった。だから、予算などで面倒みてきた。次男の毅君の仲人もした。ところが、虎雄氏が病気してから、女房、娘、息子が会社つくって蓄財し、病院経営に口出ししておかしくなった。虎雄氏は最初、家族を叱っていたが、体が不自由だから、目で訴えるぐらいしかできない。彼の意思が通じなくなり、巨大病院がおかしくなった。

 今回の事件は能宗氏がカネを横領したと徳田家が訴え、それに能宗氏が反論するという内紛で明るみに出た。警察で捜査2課長をやり、こんな事件は反吐(へど)がでるほどやった俺の経験から言わせてもらうと、東京地検、警視庁はいずれ、お手上げになり、何も立件できないよ。検察も振り上げたこぶしを下ろせないから、猪瀬氏を辞任に追い込んだんだろう。

週刊朝日  2014年1月3・10日号