アルツハイマー病に次いで多く、認知症全体の約20%を占めるレビー小体型認知症は、発症するかなり前から、体や心のさまざまな症状が起きることがあるという。院内にもの忘れドックを開設し、早期診断・早期治療の重要性を訴える順天堂東京江東高齢者医療センター教授の井関栄三医師に聞いた。

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 レビー小体型認知症は、神経細胞の胞体に「レビー小体」という異常なタンパクが溜まるのが特徴です。実際には存在しないものが見える幻視や、実際とは異なって見える錯視や誤認、これらに伴う妄想が起きたり、パーキンソン病に似た歩行の障害や体の硬さが現れたりします。

 最近になって、レビー小体型認知症では認知症害が現れるかなり前から、さまざまな前駆症状がみられることがわかってきました。そのなかで私が注目しているのが、「レム睡眠行動障害」です。当院で診ているレム睡眠行動障害の患者さんのうち、発症時期は人によってバラバラなものの、数年以内に約7割に認知機能障害が起こっています。

 レム睡眠行動障害が起こると、夢のとおりに体が動いたり、声を発したりするようになります。いわば「寝ぼけ」のような状態ですが、それよりも激しく、突然奇声を発したり、動き回ってベッドから落ちたり、一緒に寝ていた妻が殴られたりします。

 レム睡眠行動障害とレビー小体型認知症の因果関係は明らかではありませんが、レム睡眠行動障害になるとレビー小体型認知症を発症するリスクが高いので、経過を注意深く追う必要があります。当院では、レム睡眠行動障害に対する薬物治療を進めつつ、定期的に認知機能検査や画像検査をして、早期発見に努めています。認知機能障害が疑われた時点で、治療内容をレビー小体型認知症のものへと切り替えます。

 このタイプの認知症が起こりやすいのは60代以降です。それくらいの年代の家族にこのような寝ぼけのような症状があったら、レビー小体型認知症の前駆症状かもしれません。まずは一度、専門の病院で診察を受けてください。

週刊朝日  2013年12月27日号