泉田裕彦(いずみだ・ひろひこ)新潟県知事1962年、新潟県加茂市生まれ。京大法学部卒。87年に通商産業省(現・経済産業省)入省。2004年に42歳で新潟県知事に初当選し、現在3期目(撮影/写真部・東川哲也)
泉田裕彦(いずみだ・ひろひこ)
新潟県知事

1962年、新潟県加茂市生まれ。京大法学部卒。87年に通商産業省(現・経済産業省)入省。2004年に42歳で新潟県知事に初当選し、現在3期目(撮影/写真部・東川哲也)
室井佑月(むろい・ゆづき)作家1970年、青森県八戸市生まれ。レースクイーンや銀座のクラブホステスなどを経て作家デビュー。テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活躍中(撮影/写真部・東川哲也)
室井佑月(むろい・ゆづき)
作家

1970年、青森県八戸市生まれ。レースクイーンや銀座のクラブホステスなどを経て作家デビュー。テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活躍中(撮影/写真部・東川哲也)

 東京電力が再稼働をもくろむ柏崎刈羽原発は、この人の同意なしには動かない。原発問題の「最前線」で戦うキーパーソン、新潟県の泉田裕彦知事の本心は、どこにあるのだろうか。週刊朝日の連載で原発問題を鋭く指摘し続けている作家の室井佑月さんが、得意の“ぶっちゃけトーク”でズバリと切り込んだ。

*  *  *

泉田:私が通産省(現・経産省)に入省したのは、1979年のスリーマイル事故の後なんですよ。アメリカは事故が起きる前提で規制を作り、住民の避難計画を作っている。当然、日本も同じことをしなくちゃいけないと思ったのに、残念ながらそうならなかった。

室井:「日本製は安全だから」って言うんですよね。

泉田:実際は日本製のほうが危ない。フランスなどの最先端の原発にはメルトダウンした燃料を受け止める「コアキャッチャー」がついている。フランスの技術が入った中国の原発にもついています。ところが、日本の原発にはこれがついていない。世界は、メルトダウン事故を前提に対策を立てているんです。

室井:そういうことが、これまではおかしいって言えなかったんですよ。与党が強行採決した特定秘密保護法案も心配です。どこの大手新聞もこれまで書かないできて、今から言ってもしょうがないタイミングになってから書き始めて。卑怯だと思いません?

泉田:あの法案は、具体的な中身が伝わってこないですからね。われわれ地方自治体は、これまで核燃料の輸送ルートなどについて安全協定に基づいて情報をもらっていた。ところが特定秘密保護法では、地方自治体が情報を取り扱う担当に入ってない。情報がズポッと抜ける懸念があります。

室井:それ絶対おかしいですよ。いちばん最初に被害を受けるのが、その地域に住んでいる一般の人たちじゃないですか。

泉田:新潟県警は県の組織だけど、国の機関である警察庁から情報を渡されている。そうすると県警までは情報を伝えてOKだけど知事に教えてはダメ、となる可能性もあるんです。

室井:泉田知事は「県民の命と安全と財産を守るのが役目だ」って、すごく簡単なことを言っているだけなのに……。結局、国は末端の人たちを切り捨てていいと考えているって、今回の事故でわかった気がします。

泉田:さまざまな場面で、いかに情報が出ないようにするか、という力が働いているのを感じますね。例えば事故当時、福島県から要請があったので放射能測定の機械と専門知識のある職員を送ったんです。するとしばらくして、「新潟県の機械を汚したら申し訳ないから、やっぱり結構です」と言い始めた。「汚れてもいいです」と言っても、「結構ですから測らないでください」と。

室井:私も似た経験があります。事故直後、手に入りにくかった放射能の測定器を入手して、ボランティアであちこち測りに行ってたんですけど、千葉県の小学校に父母と一緒に行ったら、そこの先生に警察を呼ばれそうになりましたからね。

週刊朝日 2013年12月20日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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