全編英語、3Dアクションの侍ムービー「47RONIN」。この映画でキアヌ・リーブスと共演している真田広之さんは、作品へのこだわりを次のように話す。

「謙譲の美徳、忍耐、礼儀正しさ、圧倒的な忠誠心。外国で仕事をしていると、そういった精神は、日本人特有のものなのだなぁと感じることがあります。侍を主人公にした映画がハリウッド資本で作られることになって、僕がこだわったのは、その部分をきちんと描くこと。ファンタジーなんだけれど、最終的には、普遍的な日本人の魂のようなものが伝わればいいなと」

 ハリウッド映画「47RONIN」に、真田さんは、配役の大石内蔵助としてだけではなく、物語の中で描かれる日本の歴史や文化を監修するスーパーバイザー的な存在としても関わった。

「最初にお話をいただいたのは、ずいぶん前のことです。そのときは、ハリウッド資本で侍ムービーを作ることに、まだ抵抗感のほうが強かった。でも、それから2年ぐらいして監督が決まり、新しい台本も読ませていただいて、初めて可能性を感じました。僕がロサンゼルスを拠点に活動するようになったのも、日本が文化的な鎖国を解くためのきっかけになれたら、という思いがあったから。いつか誰かが挑戦しなければいけないなら、自分が背負ってみるのも面白いかなと思えたんです」

 そこで、真田さんが提示した条件が、「浪人役のキアヌ・リーブス以外、日本人の役には必ず日本人俳優を起用すること」。台本を仕上げる過程でも、血判状の意味や天狗の存在について説明したり、衣装に関して相談されたり、どういうアクセントの英語を使うかを話し合ったりした。

「フィクションの中に、いかにリアリティーを感じさせるかにはこだわったつもりです。ハリウッドのスタッフのすごいところは、アーティストでありながら、時間の計算もお金の計算もできて、何よりコミュニケーション能力が高い。そういう人たちが必死になって、あの手この手で自分のやりたいことを実現させようとするんです。しかも、優秀な人ほど聞き上手なんですよ。話を全部聞いた上で、実現の可能性を探りつつ、さらに手を加えたり。だから、台本にしても、小道具にしても、ブラッシュアップしていく作業は、大変でしたけど僕は非常に楽しかった」

週刊朝日 2013年12月20日号