室井佑月が「お隣さんってムカつくね」の心理を指摘

連載「しがみつく女」

週刊朝日#室井佑月
 最近、上海を旅行した作家の室井佑月氏。上海の街を歩き「そういえば」とこんなことに気がついた。

*  *  *
 中国が尖閣諸島を含む東シナ海に、勝手に防空識別圏を設定した。そして、全日空や日本航空に、飛行計画を提出しろといってきた。

 このことについて安倍首相は、「全く受け入れることはできない。自制を求める」と当たり前だが猛反発だ。

 菅官房長官も、「官民一致して対応すべく、あらためて国土交通省から、それぞれの航空会社に対し、飛行計画を中国当局に提出しないよう、協力要請をした」と怒った。

 んで、11月26日の夜、国交省に航空会社側から、今後、飛行計画書を中国当局に提出しないとの報告がなされた。

 まあね、日本の主張では、日本の飛行機は日本の防空識別圏内を飛んでいる。それなのに、中国に飛行計画書を提出しなきゃならないっておかしいもん。

 26日のニュースでは、この空域を飛行する航空会社のうち、アメリカや韓国などの30社は、飛行計画の提出要求を無視しているといっていた。中国側に応じたのは、日本と台湾、中東のカタールのみだとか。

 ほんでもって同じく26日には、米軍のB52戦略爆撃機2機が、中国が勝手に設定した空域内を通告なしで飛行した。明らかな威嚇だな。

 しかし、それから4日後、30日のことだった。ロイター通信によると、米国の航空大手3社は飛行計画を、中国当局に事前提出していることが明らかになったというではあーりませんか。

 どういうこと? アメリカは軍と民間で考え方が違うってか?

 勝手に喧嘩に割り込んできて、このやり方は汚くないか。

 そうそう話は変わって、日中問題が熱くなっている最中、女友達3人と上海旅行にいってきた。

 向こうで親切にしてくれたのは、友人の仕事仲間の中国の方々だった。

 上海ではマスクをしている人は一人もいなかった。PM2.5で大変なことになっているんじゃないのか?

 ニュースでは、マスクをしている中国人の群れが何度もしつこく流れていた。中国は広いから上海は大丈夫なの? あたしがそう訊ねると、

「大丈夫ってことはないでしょうけど、気にしているのは意識の高い一握りの人でしょうね。それより日本の放射能汚染は、すっごいことになってるんでしょ。大丈夫ですか?」

 と逆に訊ねられた。あたしたちはお互いに顔を見合わせゲラゲラ笑った。

 国内では、お隣の国の問題をデフォルメしニュースでバンバン流す。これって国内の不満ガス抜きの常套手段だ。「お隣さんってムカつくね」、そういう気持ちで家族(同じ国の人)は結束すると信じられているらしく。

 そういえば、原発事故が起こってからかも、ニュースで盛んにPM2.5について騒いでいるの。おかしくね? PM2.5はいきなりすごいことになったわけじゃないのに。

週刊朝日 2013年12月20日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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