脱原発を訴える小泉元首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
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アンケート集計結果はこちら(政党別ページになっています)
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 小泉純一郎元首相の脱原発宣言が波紋を呼ぶ中、本誌では全衆院議員に対し、原発政策を問うアンケートを実施した。

「これほどリスクの高いアンケートに回答する議員は、はっきり言って誰もいないんじゃないですか」「小泉さんの脱原発宣言をどう思うかなんて、聞かれても答えられませんよ」 とある自民党議員の秘書は、そう断言した。そして理由を次のように説明した。

「確かに世論調査で脱原発は7割に達します。ですが、その希望時期となると『即時』から『2050年代』までバラバラです。おまけに非科学的な放射能アレルギーを主張する有権者もいますから議論にならない。原発問題で主張しても、うちの議員には何のメリットもないんですよ」

 こんな“非公式回答”が多く寄せられた本誌の原発アンケートは、安倍晋三首相を筆頭に衆院議員全480人を対象に行った。

 大まかな内容は(1)小泉純一郎・元首相の「原発ゼロ発言」に対する見解(2)脱原発へのスタンス(3)核燃料サイクル問題に対する見解――の3点だ。

 アンケートを返信した議員は118人(うち8人が拒否)、口頭での拒否は27人で、何らかの意思を表明したのは145人。

 残念ながら全体の3割にしか達しなかったが、これを政党別に見るとなかなか興味深いものになる。

 低い順に(1)自民24%(2)公明、維新 26%(4)民主34%(5)生活 57%(6)みんな 83%(7)共産 100%という結果だった。つまり与党ほど「口が重くなる」という傾向が浮き彫りになったわけだ。

 結果、自公の現役閣僚からは回答を得られなかった。

 例えば、石原伸晃環境相は、その父親で日本維新の慎太郎・共同代表、弟で自民党の宏高議員とも締め切りまでに連絡はなかった。

 大半の大臣が“沈黙”する中、今月5日に舌がん罹患を発表した甘利明・経済再生相と数人の副大臣が「現在内閣の一員であるため各種アンケートにつきましては回答を控えさせていただいております」などのファックスを寄せた。

 人気者の小泉進次郎・復興政務官の事務所はアンケートの受け取りそのものを拒否。父親への思いはうかがい知れなかった。

 自民党執行部も基本は同じ。石破茂幹事長からは「慣例に従って回答はできない」という書面が届き、さらに、原発に関する党公約も丁寧に添付されてあった。

 だが、野田聖子総務会長、高市早苗政調会長には再三、回答を依頼したが、完全にスルー。原発問題の論客として知られる自民党の河野太郎議員は「インド出張で多忙」との連絡で終わり。

 前政権を担った民主党も変わらない。経産相を務めた海江田万里代表、枝野幸男議員からは連絡はなく、前首相の野田佳彦議員も事務所が口頭で「もともとアンケートには協力していない」と言う。

 一方で菅直人議員は締め切りよりかなり早い段階で回答を寄せた。

他には徳洲会事件の渦中にある徳田毅議員からも連絡はなし。逆に徳洲会との関係が取りざたされる無所属の阿部知子議員からは「脱原発」の“熱い”回答が寄せられた。同じく無所属の亀井静香議員も脱原発を訴える回答を寄せたが、「生活の党」の小沢一郎代表の返事はない……。

 それでは具体的な回答をご紹介しよう。

 小泉氏の脱原発に対しては、非公式に「この設問がなければ、協力したのに……」という悲鳴やお叱りの声が多く聞こえた。特に自民党にとって“元首相・党総裁の反乱”は依然としてデリケートな問題らしい。

 自民党の回答者40人のうち小泉氏の「原発ゼロ発言」を「正論」とする選択肢を選んだ議員はわずか2人にとどまった。世論調査での支持率が60%台に達したのとは対照的だ。

 最多は肯定的なニュアンスを含む「一部には傾聴する意見がある」で20人となったものの、「基本的に無視」「ノーコメント」など他の選択肢を選んだ議員を合計すると18人となり、意外にも肯定派に負けていなかった。小泉氏に否定的なスタンスを取る自民党議員の多くは自由記述欄に「目立ちたいだけ」などと率直な意見を記していた。

週刊朝日 2013年12月20日号