「んっ?」と感じるヌード写真 カメラマンはあの…

週刊朝日
 作家でコラムニストの亀和田武氏は、ある写真家のヌード写真に心動かされた思い出があるという。

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 沢渡朔(さわたりはじめ)という写真家をこの10年あらためて意識するようになった。

 男性誌のグラビア頁を何気なく観ていて、「んっ?」と感じるヌード写真がある。エロイけど、シャープで洗練されている。クレジットをみると沢渡の名前が。何十回もそんな体験をした。

 その沢渡朔の写真を主軸に据えた「アサヒカメラ」特別編集の「NUDE!」(朝日新聞出版)が刊行された。

 撮り下ろしヌードのフレッシュな質感と色合いが印象に残った。観る者の欲情ポイントを刺激しつつ、作品として自立している。アートになると、エロは消えるんだけどな、普通は。今年73歳とは思えない官能力がみなぎる。

 沢渡は73年の『NADIA 森の人形館』と『少女アリス』で作品的評価と商業的成功を得た。本人いわく「バカだから調子に乗っちゃったんじゃないですか」「黙っていても仕事がバンバン来るし、毎晩宴会みたいな」。そして「ゆるやかに落ちていって……」という軌跡を辿った写真家が、ファッションやアートでなく、意識的にヌードを撮りだし、新境地を切り開いた。

 戦前のヌード写真にも頁を割く構成が、誌面にアクセントを生みだす。とりわけ明治22年生まれの野島康三が撮った「モデルF」の存在感が際だつ。容姿や体型に難があると指摘されるが、モデルFの顔と身体はいまも強い印象を放つ。

 鹿島茂の“昭和30年代のエロ雑誌”にみるワイセツ性の考察も興味を惹く。じつは私も70年代後半のヌード誌を語っていて、「NUDE!」紹介を一瞬ためらったが、ヌードの誘惑に負け、取り上げた。

 NUDEとは何か。飯沢耕太郎の論考や中森明夫の文章もテキストに、裸体と写真にせまりたい。(この項つづく)

週刊朝日  2013年12月13日号

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