豪華ではないが、安っぽくもない。しいて言えば、シンプル。

 ユニクエスト・オンラインが2009年から始めた「小さなお葬式」は、通夜と告別式を行わない直葬(火葬のみ)プランを選べば、わずか17万8千円だ。読経や戒名はオプションで、例えば、炉前で読経してもらい、戒名を授与された場合は、葬儀料金と別に5万5千円がかかる。

 火葬だけでは忍びないという顧客には、「火葬+告別式」で33万8千円、「火葬+通夜+告別式」で49万8千円というプランも用意されている。全国平均120万円と言われる葬儀料金と比べると、圧倒的な安さである。「本当に葬儀に必要なものだけに絞った」と同社は自信を見せる。

「小さなお葬式」は、コールセンターに電話をかけてきた顧客に、「特約店契約」を結んでいる全国の葬儀社を紹介する仕組みだ。全国800社の葬儀社と提携し、すでに年間1万件以上を手がけている。09年から開始してたった4年で、飛躍的な成長を遂げている。

 さて、どうして、これほど伸びたのか。

 理由の一つは、これまでの葬儀料金が不透明すぎたことだ。身内の突然の死で混乱しているときに、法外な料金を請求する葬儀社が少なくなかった。葬儀料金は基本的に「言い値」であり、口約束で契約書は交わさない。見積もりと請求額の差が大きいことは当然だった。

 とはいえ、喪主がクレームをつければ、「お金にこだわってばかりで人の死を悲しみ悼んでいない」と、周りに冷ややかな目で見られかねない可能性もある。

「『小さなお葬式』は、セットプランで追加料金なし、という明朗会計が受け入れられたんだと考えています」(広報担当者)

 二つめの理由は、「子どもや親戚に経済的な負担をかけたくない」と、自ら質素な葬儀を望む人が増えたことがある。特に菩提寺(ぼだいじ)を持たない都市部にそうした考えの人が多いそうだ。また、死亡する年齢や喪主の高齢化に伴って、葬儀に参列する人が少なくなった。同社が用意するプランが家族葬が中心なのも、そんな社会の変化がある。

 同社の田中智也社長(34)は、葬儀業界をバッサリ切る。

「4千円、5千円で仕入れた棺をこれまで10倍近い値段で葬儀屋は売ってきた。そんな不明瞭な業界はあり得ないですよ」

 そして、こう続ける。

「人は平等に死んでいくんです。しかし、死ぬときの経済状況はそれぞれ違う。借金をかかえた人もいれば、貯蓄が1億円の人もいる。しかし、葬儀屋が提供するのは高価なモノしかなかった。最低限のものでいいという人もいるのに。自動車にはレクサスがあれば、ワゴンRもある。我々はワゴンRを作り、そして売る」

週刊朝日 2013年12月13日号