W杯でも歓喜の瞬間が見たい(写真は7月の東アジア杯) (c)朝日新聞社 @@写禁
W杯でも歓喜の瞬間が見たい(写真は7月の東アジア杯) (c)朝日新聞社 @@写禁

 7カ月後の2014年サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会に向け、「ザックジャパン」のくもっていた視界が開けた。

 W杯の前哨戦と位置づけられた6月のコンフェデレーションズ杯では、ブラジル、イタリア、メキシコに3連敗。さらに10月の東欧遠征では、セルビア、ベラルーシという「格下」相手にも立て続けに敗れ、ザッケローニ監督の解任を求める声まで上がった。

 そんな状況が、今月の欧州遠征で一変する。前回のW杯準優勝のオランダと2‐2で引き分け、国際サッカー連盟(FIFA)ランク5位のベルギーには、3‐2で逆転勝利をおさめた。この1カ月で、何が変わったのか。

 FW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)は「先月とは気持ちの面が違った」と語る。

「先月は迷いがあった。今回はみんな自信を持って、思い切ってやってましたね」

 新戦力が台頭し、競争が激化したことも好循環を生んだ。オランダ戦ではFW大迫勇也(鹿島アントラーズ)、ベルギー戦ではFW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)と、1トップで起用された新戦力がそれぞれ1ゴール1アシストの大活躍。

 さらに、遠藤―長谷部ラインで不動だったボランチにも、オランダ戦からMF山口螢(セレッソ大阪)という新星を起用し、十分に機能した。山口に刺激を受けたかのように、ベルギー戦ではMF長谷部誠(ニュルンベルク)が奮闘した。

「あれだけいい長谷部を見たのは、久しぶりでした。もちろん彼のコンディションが上がったこともあるだろうけど、山口の活躍による危機感も確実に影響していたと思います」(Jリーグクラブ監督)

 MF遠藤保仁(ガンバ大阪)後半起用という新たな“オプション”が見つかったことも収穫だった。

「世界トップレベルの試合で、90分間にわたってプレーするのは、33歳の遠藤には難しい面もある。だけど後半の45分だけなら、日本屈指の技術を発揮できる。さらにベテランの遠藤がピッチの外から試合を見ることで、ベルギーの攻略法も見つけられた。遠藤自身が『ボランチのエリアは、ほとんどノープレッシャーだった。多少リスクを負っても、前に出ればチャンスになると思ってプレーした』と話したように、攻撃の人数を増やしてベルギーに圧力をかけられた」(サッカー専門誌記者)

 遠藤はこう言っている。

「今の状況が、自分たちのピークじゃない。最低限、この精度を保って、もう一段階上のチームにしたい」

 ブラジルで過去最高のベスト8以上の結果を目指す日本代表に、立ち止まっている時間はない。

週刊朝日 2013年12月6日号