あの世の偉大な祖父に、雄姿を見せる日が迫る。

 戦後プロレス界の礎を築いた力道山の死から半世紀。命日の翌日となる12月16日、後楽園ホールで「力道山没50年メモリアル興行」(主催・リキエンタープライズ)が開催される。

 初代タイガーマスクの佐山聡や佐々木健介ら新旧のスター22人が出場予定だが、この日デビューする男にも注目が集まっている。

 百田力(ももた・ちから)、32歳。祖父は力道山、父は現役レスラーの百田光雄(65)で、日本プロレス界初の3世選手だ。当日は父とタッグを組み、折原昌夫・NOSAWA論外の悪役コンビと対戦する。力が意気込みを語る。

「相手はムチャクチャやってくるので、流血や骨折は覚悟しています。30過ぎてのデビューですが、祖父の名に恥じないよう名前通りの力強い試合をしたい」

 大きな挫折もあった。高校時代はレスリング部に所属。大学ではスポーツジムで体を鍛え、卒業後の2004年に父が所属していたノアの入門テストを受けた。だが、あえなく不合格。

「体力テストで腹筋、腕立て伏せ各500回はこなせたんですが、その後のスクワットで力尽きてしまった。『レスラーになる』という目標はあったけど、どこか甘さもありました」(力)

 父からは「二度と受けるな」と厳しい言葉をかけられた。落ち込む中、祖父の現役時代のDVDを見た。世界王者・ルー・テーズの必殺技であるバックドロップを受けながら、空手チョップで敢然と立ち向かう姿に体が熱くなった。

 平日はスポーツジムのインストラクターをしながら、再び過酷なトレーニングを積んだ。週末には父の試合のセコンドも務めた。

 一念発起の真剣な姿勢が認められ、今年2月に「天龍プロジェクト」に入団。その後移籍し、メモリアルデビューが決まった。

「うれしかったですね。この半年間は受け身を徹底的に鍛えました。来る日も来る日も先輩5人とスパーリングしたおかげで、スタミナもつきました」(同)

 父も「やられたときの反骨心、相手に向かう気迫はオヤジ(力道山)に通じるものがある」と目を細める。

 となれば、力道山ファンが期待するのは、あの“必殺技”。習得は進んでいるのか、父に聞いた。

「空手チョップの基本は腕。かなりトレーニングをやらせ、腕は太くなった。縦のチョップも水平形も威力を増してます。あとは流れの中でいかに効果的に出せるか。残り1カ月、しっかりと身につけさせますよ」

 デビュー戦には黒のロングタイツとシューズで臨む。おなじみの力道山スタイルで、遅咲きの花を咲かせることができるか。

週刊朝日 2013年12月6日号