文筆家の北原みのり氏は、本誌連載「ニッポンスッポンポン」の中で、ももクロファンと矢口真里について持論を展開する。
* * *
ももクロの特集番組を見た。彼女たちの日常をカメラが追いかけ、なぜももクロは人の心を掴むのか、に迫ろうとしていた。
司会者が言っていた。
「マネジャー(男)は今も、ももクロに弁当を自分で買いに行かせる。一人600円(正確ではないです)と決めてお金を渡し、30円でも出たら、もう一度買いに行かせる」
ももクロは「部活」で、マネジャーは「顧問」で、10代の一番熱い時代を全力でビジネスとして再現しているのだ、という話だった(と、私には見えた)。
ももクロ好きの男性に何がいいのか? と聞いた。性的に魅力的なの?
「性的? ないない。僕の場合は、ももクロって保母さんなんです。新しいお遊戯、覚えた? って楽しく一緒に踊ってくれるような人ですよ」
別の男性は、「ももクロの守護霊になりたいんだよね。性的対象じゃない、守りたい」
それって透明人間になって監視したいってこと?
今のアイドルは、ももクロをはじめ、性的には求められず、男たちが「守り」「守られる」 ファンタジーを寄せられる頑張り屋さん! という存在らしい。必死さが売り、というか。
そう考えると、矢口真里さんへの激しすぎるバッシングもよくわかる。夫以外の男を家に招き、現場を夫に押さえられ、あっという間にテレビから姿を消した矢口真里さん。先日は、その男と焼き肉を食べている様子が報道され、またバッシングがはじまっている。東スポなんて「懲りない下半身」と大きな見出しつけてたよ。私は、女性が「下半身」のだらしなさで真っ正面からここまで責められるのを、初めて見ました。
欲望のまま性的に生きる女を叩く一方、性を感じさせず一生懸命な女を愛でる社会。大人の女としては、矢口真里派として闘いたいです。下半身、懲りてませんけど、なにか?
※週刊朝日 2013年11月29日号