文筆家の北原みのり氏は、本誌連載「ニッポンスッポンポン」の中で、ももクロファンと矢口真里について持論を展開する。

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 ももクロの特集番組を見た。彼女たちの日常をカメラが追いかけ、なぜももクロは人の心を掴むのか、に迫ろうとしていた。

 司会者が言っていた。

「マネジャー(男)は今も、ももクロに弁当を自分で買いに行かせる。一人600円(正確ではないです)と決めてお金を渡し、30円でも出たら、もう一度買いに行かせる」

 ももクロは「部活」で、マネジャーは「顧問」で、10代の一番熱い時代を全力でビジネスとして再現しているのだ、という話だった(と、私には見えた)。

 ももクロ好きの男性に何がいいのか? と聞いた。性的に魅力的なの?

「性的? ないない。僕の場合は、ももクロって保母さんなんです。新しいお遊戯、覚えた? って楽しく一緒に踊ってくれるような人ですよ」

 別の男性は、「ももクロの守護霊になりたいんだよね。性的対象じゃない、守りたい」

 それって透明人間になって監視したいってこと?

 
「透明人間と守護霊は違う!」…。別の男性は、「メンバーの両親が離婚して、その後に義父として関わりたい。父として関わる権利が欲しい……。性的な魅力はないっすよ」

 今のアイドルは、ももクロをはじめ、性的には求められず、男たちが「守り」「守られる」 ファンタジーを寄せられる頑張り屋さん! という存在らしい。必死さが売り、というか。

 そう考えると、矢口真里さんへの激しすぎるバッシングもよくわかる。夫以外の男を家に招き、現場を夫に押さえられ、あっという間にテレビから姿を消した矢口真里さん。先日は、その男と焼き肉を食べている様子が報道され、またバッシングがはじまっている。東スポなんて「懲りない下半身」と大きな見出しつけてたよ。私は、女性が「下半身」のだらしなさで真っ正面からここまで責められるのを、初めて見ました。

 欲望のまま性的に生きる女を叩く一方、性を感じさせず一生懸命な女を愛でる社会。大人の女としては、矢口真里派として闘いたいです。下半身、懲りてませんけど、なにか?

週刊朝日  2013年11月29日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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