安倍政権がようやく市販薬のネット販売にルールを定めた。市販薬の99.8%が対象で、来年4月の開始とみられている。便利な半面、安全に薬を使うための正しい知識が不可欠となった。どんな対策が必要なのだろうか。

 意外な「落とし穴」なのが、市販薬と処方薬の飲み合わせだ。たとえば「骨にはカルシウムがいい」と考えて、市販の総合ビタミン薬と骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬を両方飲む。効果が倍増しそうな感じもするが、実は逆に骨粗鬆症治療薬の効果を弱めてしまう。それ以外にも、「市販の解熱鎮痛薬と、処方薬の消炎鎮痛薬は、同じようなメカニズムを持っています。一緒に飲むと作用が強くなりすぎて、胃腸障害や肝障害を引き起こすケースもあります」(岩手医科大学薬学部非常勤講師・武政文彦氏)。

 薬を賢く買って使うには、どうしたらいいのか。北里大学薬学部の鈴木順子教授はこう指摘する。

「ネット販売では怪しい業者も多く見られます。『医薬品(店舗)販売業許可』を受けているか、チェックしてください。きちんとした業者なら許可番号があるので、厚労省が開示しているリストと照らし合わせて確認できます」

 それどころか、ネット販売業者のなかには、「ニセ薬」を平然と売っているところもある。特に問題になっているのが、「バイアグラ」などの勃起不全治療薬だ。これらは処方薬だが、個人輸入で手に入れることができる。医薬品事情に詳しい「卵巣がん体験者の会スマイリー」代表の片木美穂氏は、こう話す。

「『バイアグラ』とうたいながら、成分はまったく異なるケースも目立っています。今後ネットで売られる市販薬が増えれば、海外で製造されたニセ薬が国内で大々的に流通する恐れも」

週刊朝日  2013年11月29日号