徳田虎雄前理事長(75)や前理事長の娘たちが公職選挙法違反に問われ、次男は衆院議員の職を失う危機にある日本最大の医療グループ「徳洲会」。ジャーナリストの今西憲之氏と本誌取材班が同グループの過去をこう報告する。

 今回の事件前から、徳洲会については、選挙での派手な「カネ」の動きが取り沙汰されてきた。「医療の理想実現のためには人殺し以外何でもやる」と語られるように、「目的が正しければ、どんな手段も正しい」というような前理事長の極端な考え方からだ。

 とりわけ前理事長が保岡元法相と一騎打ちした時代は「保徳戦争」と呼ばれ、衆院選だけでなく、系列が争う町長選などでも熾烈な金権選挙が繰り広げられた。選挙ごとに逮捕者が出て、徳田陣営は選挙違反の“前科者”が多くなったという。このころ選挙違反事件を捜査した警察関係者は、「選挙区最大の奄美大島は、虎雄か保岡、どちらが勝つか賭けが盛んでした。虎雄側は有権者にカネを握らせ、『うちが勝つからこのカネで賭けろ』と現金を配って歩いていた。事務所の裏の金庫には、現金がうずたかく積まれていた。すさまじいカネの力でした」と話す。また、前理事長の元側近はこう証言する。

「選挙ではカネがうなっていた。虎雄前理事長が自らカバンに現金を何千万円と詰めて、選挙区に運んだ。徳田ファミリーがあちこちでカネをつくり、選挙に使う。うちの選挙では当たり前の風景ですよ。衆院選なら最低でも10億、いや20億円は使っていたはずだ」

「昔、大阪で億単位のカネが合わないと税務署がやってきた。病院のカネをすべて選挙に突っ込んでいた。税務署に『病院と選挙の財布が同じだ』とあきれられたが、個人的に使ってないといってなんとかすんだ」

週刊朝日 2013年11月29日号