佐々木ゆり(右) 管理栄養士で、食や医療・健康などを扱うライターとしても活躍。著書に『コンビニ食材だけで 健康ラクうまごはん』など吉岡英尋(中) 永田町「瓢亭」で首相官邸出前料理番を担当。2000年、「なすび亭」(東京・恵比寿)を開店し、「ミシュランガイド」で2年連続、星を獲得和田隆昌(左) 災害危機管理アドバイザー、特定非営利活動法人防災・防犯ネットワーク理事(防災担当)。著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』など(撮影/関口達朗)
佐々木ゆり(右) 管理栄養士で、食や医療・健康などを扱うライターとしても活躍。著書に『コンビニ食材だけで 健康ラクうまごはん』など
吉岡英尋(中) 永田町「瓢亭」で首相官邸出前料理番を担当。2000年、「なすび亭」(東京・恵比寿)を開店し、「ミシュランガイド」で2年連続、星を獲得
和田隆昌(左) 災害危機管理アドバイザー、特定非営利活動法人防災・防犯ネットワーク理事(防災担当)。著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』など(撮影/関口達朗)

 東日本大震災以降、最近の非常食は劇的な進化を遂げているという。種類も豊富だが、どんな保存食がいいのか。栄養管理士で食や健康などを扱うライター・佐々木ゆり氏、「ミシュランガイド」で2年連続、星を獲得した「なすび亭」(東京・恵比寿)の吉岡英尋氏、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏の三人に、最先端の非常食を「激辛採点」してもらった。本邦初“ミシュラン防災版”の栄えある三つ星とは――。

和田:地震発生直後の混乱した状況下では、小型・軽量で携帯しやすく、封を開けるだけで食べられる非常食が活躍します。手に入りやすい栄養機能食品から選ぶなら、「バランスパワー6YEARS」がおすすめです。小腹が空いたときのおやつにもなるので、普段持ち歩くかばんに入れておいて、損はありませんよ。

吉岡:適度にしっとりしていて食べやすく、練りこんであるチョコレートチップが、カリカリしているところもいいですね。非常食の代名詞・乾パンも食べてみると、香ばしくて素朴な味わいに安定感がありますが、やはり水がないと食べづらいです。

佐々木:被災の最初期は飲料水すら手に入らないこともあります。また、緊張で口が渇いてしまうことも。そういうときは、あご裏にある舌の付け根や耳の下を押して刺激すると唾液(だえき)の分泌が促されます。ぜひ、覚えておいてください。

和田:東日本大震災では、早いところで翌日から炊き出しが始まったようです。これは火をおこせる場所があって、畑の作物や川の水が活用できる地方だから可能だったこと。首都直下地震のような都市型の地震では、食料事情はもっとシビアになります。

佐々木:自治体や国からの食料が届くまで、運が悪いと何日もかかります。被災地が広範囲に及ぶ南海トラフ地震では、もっと長期化する可能性も。たった4日食べられないだけでおどろくほど衰弱してしまいます。食べてすぐエネルギーになる「炭水化物」系の備蓄は欠かせません。

吉岡:水やお湯で戻せる「アルファ米」のごはんは、いろいろな企業が作っているようですね。白飯を食べてみましたが、ボソボソ感が気になって、単体で食べるのは厳しかったです。

和田:今回はお湯で戻しているからまだマシですが、水で作るともっとひどいですよ。味付きのものは食べやすい。「松茸ごはん」というのも今秋から発売になったんですね。

吉岡:非常食に松茸はやりすぎでしょう……でも、意外と食べられる(笑)。きのこから出汁(だし)が出ているんですね。和風の味付けというのも親しみやすい。具がたくさん入っているものは比較的食べやすいものが多かったです。アルファ米商品を買うなら、きのこや魚介類など、出汁になる食材が入っているものを選んだほうがいいでしょう。

和田:今まで数多くの非常食を試食してきたけど、米国でトップシェアだという「パスタ・プリマヴェラ」には、ちょっと驚きました。賞味期限が25年なので、味は期待していなかったけれど、国産の類似商品に比べて格段においしい。フリーズドライの野菜がたくさん入っていて、パスタにもコシがあります。米国の食べ物は大味な印象があるのに、意外だなぁ。

吉岡:ファミレスのメニューみたいな濃いめの味付けなので、非常食独特のにおいがうまく隠れていますね。非常食はこれくらいしっかりした味のほうがいいのかも。同じ理由で、カレー味のものは抜群の安定感をみせていますね。「キーマカレー」は、専門店のカレーのようなスパイシーさが魅力的です。

週刊朝日 2013年11月22日号