16日から全国公開される映画「くじけないで」で、主人公の詩人・柴田トヨさんを演じる女優の八千草薫さん。八千草さんは作家・林真理子さんとの対談で宝塚時代の思い出をこう明かした。

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林:お父さまとお母さま、どちらに似ていらっしゃるんですか。

八千草:父は2歳のときに亡くなっていて、父の写真は若いときのものしかないんです。どっちに似ているのかな。やっぱり半分半分。おでこなんかは母に似ています。口は父に似ているなと思ったり。

林:近所でも評判の美少女だったんでしょうね。

八千草:そんなことないです。もうほんとにダメだったんです。一人っ子ということもあったんでしょうね。何しろ人の中に入るのがダメでしたから。お客さまがみえると、隠れて出てこないという。

林:そういう方が宝塚に入って大丈夫だったんですか。ラインダンスで足を高く上げたりするのはできたんですか。

八千草:そういうのは大丈夫というか、レッスンはすごかったですけどね。阪急電車の西宮北口というところで乗り換えていたんですけど、階段で足が上がらないんですよ。いつも手すりにつかまって階段を上がっていました。みんなそうでしたね。

林:宝塚ではトップまで行かれたんですよね。

八千草:私のころは、トップなんていう制度はなかったんです。

林:そうなんですか。今でも上下関係はすごく厳しいみたいですね。

八千草:それがね、私の時代はそんなことぜんぜんなかったんです。上級生は上級生で敬っていましたが、厳しいなんてあまり思わなかったですね。いまはすごいですよね。宝塚の人にたまたま会うと、「あ、先輩!」なんて言われて、なんでそんなに「先輩、先輩」と言うのかなって。廊下を歩くときはどっちかに寄って、目を見ちゃいけないとか聞いて、びっくりしました。

週刊朝日 2013年11月22日号