ジーン・F・シュルツ夫人(撮影/鶴崎燃)
ジーン・F・シュルツ夫人(撮影/鶴崎燃)
六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「スヌーピー展」の展示物の前で(撮影/鶴崎燃)
六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「スヌーピー展」の展示物の前で(撮影/鶴崎燃)
スヌーピーの巨大人形も(撮影/鶴崎燃)
スヌーピーの巨大人形も(撮影/鶴崎燃)

 アメリカが生んだ“スター”スヌーピーは、どこかまじめで、どこかお調子者。サングラスをかけたり、帽子をかぶったり、落ち葉の山に飛び込んだり。スヌーピーのそんなしぐさや仲間たちとのふれあいは、長年、世界中で親しまれてきた。

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 約半世紀にわたって積み重ねたエピソードは、全部で1万7千回以上にのぼる。

「漫画家を夢見た一人の少年が、大人になってもそのまま描き続けただけなんですけどね」

 漫画「ピーナッツ」の作者のチャールズ・M・シュルツさんについて、夫人のジーンさんが、そう話す。

 1950年10月2日に新聞連載がスタートして、99年に引退するまで、シュルツさんは子どもたちの“日常”を描き続けた。掲載紙誌が世界中で2千を超えるほど圧倒的人気を誇る漫画(かつては週刊朝日でも連載)について言うまでもないが、「ピーナッツ」の主人公はチャーリー・ブラウン。スヌーピーは主人公より有名な、脇役だ。

 半世紀前は4本足で歩いていたスヌーピーは、いつしか2本足で走り回る。時に温かく、時に皮肉っぽく、言葉をつむぐ。あたかも他の登場人物と会話をしているようだが、独特な吹き出しの形を見てもわかるとおり、スヌーピーの言葉は他のキャラクターに届いていない。スヌーピーの“思考”が、世界を揺り動かしてきた。

 愛くるしいキャラクターのデザインからか、日本では子どもにすすめる大人も多い。ただ、ウイットに富んだ言葉は、大人向きといえなくもない。

「子どもと大人の受け止め方は当然違います。でも、それでいいんです。大人だって、25歳と50歳では受け止め方が全然違うでしょ」(ジーン夫人)

 漫画では、レンガ塀の後ろにチャーリー・ブラウンなどを立たせる、おなじみのシーンがある。当時の漫画は、塀などに腰掛けておしゃべりする姿が描かれていた。だが、これでは真似した子どもたちにいつ事故が起きても不思議ではないという思いから、レンガ塀の後ろに立たせた。子を思う親の気持ちや悲哀を、スヌーピーをはじめ漫画のなかの“子どもたち”が表現した。

「彼は一人の人間として親としての関心を描いていたんです」

週刊朝日  2013年11月15日号