高齢男性に多い尿のトラブル。トイレが近い、尿の切れが悪い、残尿感があるなど症状はさまざまだが、その要因として真っ先にあげられるのが前立腺肥大症だ。これまで治療が難しかった患者に効果を上げる治療が生まれている。

 急にトイレに行きたくなって困る症状は、前立腺肥大症だけでなく、少しの刺激で膀胱が反応してしまう過活動膀胱も原因となる。しかも、前立腺肥大症の50~70%は過活動膀胱の症状を伴う。α1遮断薬は前立腺肥大症と過活動膀胱が併発した患者の半数程度にしか効果が見られなかった。だが、これまで効果が見られなかった患者に対して、α1遮断薬に加え、過活動膀胱の治療に使う抗コリン薬の併用がここ数年はじまっている。

 抗コリン薬の併用がこれまで行われていなかった理由を東京リハビリテーション病院泌尿器科の鈴木康之医師はこう語る。

「抗コリン薬は膀胱の過度の収縮を抑える薬で過活動膀胱の治療では一般的なのですが、もともと尿が出にくい前立腺肥大症の患者に使うと余計におしっこが出なくなってしまう場合もあるため、長らく使用が認められていなかったのです」

 

 しかし、さまざまな治験の結果、慎重に投与すれば併用療法に効果があることが認められたため、α1遮断薬だけでは効果が見られなかった患者への適用が認められた。国際前立腺症状スコア(IPSS)20点、過活動膀胱症状スコア(OABSS)12点だった浜田恵一さん(仮名・60歳)も併用療法を行ったところ、IPSSは7点、OABSSは2点まで下がり、普通に日常生活を送るにはほとんど問題がないところまで改善した。また、心配されていた、尿が出にくくなったり、残尿感が残ったりする症状も見られなかった。

「抗コリン薬の併用療法は浜田さんの場合のように著しい効果をあげることもありますが、逆に排尿困難などの有害な症状があらわれることもあります。慎重な投与が求められる治療法ですので、必ず専門医のもとで治療を受けてください」(同)

週刊朝日  2013年11月15日号