銀座8丁目の路地の一角にある「カフェ・ド・ランブル」。昭和の香り漂うレトロな店構えの喫茶店は、知る人ぞ知るコーヒー通が集まる店だ。マスターの関口一郎さんは御年99歳。家族や知人から白寿のお祝いをしてもらったばかりだ。

 そんな関口さん。唯一続けているものといえば、コーヒーだ。焙煎状態や味を確かめるため、毎日4、5杯のコーヒーを飲む。

「コーヒーは体にいいんですよ。でもね、喫茶店を始めたころは、体によくない飲みものだと悪者扱いされていました。最近はいい評価をする研究者が増えてるから、ありがたいですね」

 実は、コーヒーにさまざまな健康効果が期待できることは、10年以上前から多くの研究者たちが指摘してきた。

 糖尿病(2型糖尿病)に関しては2002年、世界的に権威のある医学誌「ランセット」に、「コーヒーを1日に7杯以上飲む人の糖尿病の発症リスクは、2杯以下しか飲まない人に比べて半分程度」という論文が載った。

 これはオランダの研究者が報告したものだが、『コーヒーの医学』(日本評論社)の編著者で、国立国際医療研究センター糖尿病研究部の野田光彦部長は、朝日生命糖尿病研究所(当時)にいたとき、この記事を目にして驚いた。ちょうど自身が進めていた調査の解析内容と同じだったからだ。

「私たちは国立がん研究センターなどで行う疫学研究の一環として、東京都葛飾区の方々の血糖値を調べていました。糖尿病と診断されていない4620人の空腹時血糖値を分析すると、コーヒーを週に1回以上飲む人は、飲まない人に比べて、値が低い人が多いことがわかったのです」

 野田氏は、オランダの研究に賛同する意見と、自身の調査結果をランセット誌に送付。同誌に掲載された。

「糖尿病とコーヒーの関係については、現在までに20以上の疫学調査が報告されていて、そのデータをまとめて解析した論文が発表されています。それには、1日3、4杯のコーヒーを飲むと、糖尿病の発症リスクが約25%減るという結果が出ていました」

 野田氏によると、カフェインの代謝の強さに関わる遺伝子と、糖尿病発症との因果関係を示す研究報告も出されているという。これは酒に強い遺伝子を持つ人・持たない人がいるのと同じように、「カフェインを代謝しやすい・しにくい遺伝子」らしきものがあり、カフェイン摂取と糖尿病発症との関係がこの遺伝子に左右されることも、ある程度わかってきたというものだ。

週刊朝日  2013年11月15日号