ギャル男(お)」という若者文化が危機にひんしている。ギャルのような服を着た男性を、こう呼んできた。

「日焼けサロンで黒く焦がした肌に、長く伸ばしたメッシュ入りの金髪。そして派手なアクセサリーで飾り立てた若者男子の総称ですよね」(スタイリスト)

 その文化を牽引(けんいん)してきた男性ファッション誌「メンズエッグ」(大洋図書)が、10月12日発売の11月号を最後に無期限の休刊となった。

「14年の歴史に幕を下ろす事実上の廃刊です。原因は出版不況だけではなく、ギャル男ブームが終わったのが大きい」(出版関係者)

 芸能界に多くの人材を送り出してきたギャル男の世界。11月2日発売の『渋谷(ヒロム)と呼ばれた男~ギャル男の終焉~』(鉄人社)の著者で、元「メンズエッグ」カリスマモデルの植竹拓(ヒロム)さんは、こう振り返る。

「1990年代後半に火がつき、最盛期は2005、06年ごろでした。今の若者は『ギャル男』という言葉自体、ほとんど使いません。とはいえ、ギャル男にあたる若者が消えた訳ではない。男性のファッションが多様化、細分化したことで、『ギャル男』という言葉ではひとくくりにできなくなったのが現実だと思います」

 渋谷という街の求心力が低下したこともブームが衰退した原因ではないかと、植竹さんは分析する。

「ブログやSNSなどが普及するにつれ、若者は街に出かけなくても自己主張できるようになった。渋谷という街に出なくても、仲間がつくれるようになった」

 渋谷区内で飲食店を営む男性は、別の角度から「渋谷」を語る。

「渋谷では、地元商店主が中心となったSCGPという自警団が組織され、05年ごろから路上でたむろする若者を排除するようになりました。街が清潔になった一方、居場所を求める若者は追いやられてしまった」

 そんな若者が、ネットの世界に足場を移したのか。最後に、植竹さんはこう総括する。

「ギャル男は男性による渋谷発信の若者文化としては、過去最大規模だったと思います。『なんでもあり』という折衷主義的なファッションスタイルは、日本のオリジナルです。元祖ギャル男代表として、その精神は継承していきたい」

 時代の鏡として浮上し、消えたギャル男。そのハートよ、永遠なれ。

週刊朝日 2013年11月8日号