大学の学費を補助する奨学金には、貸与型と給付型がある。しかし日本では「借りるもの」という印象が強く、実際に貸与型の奨学金が多い。

 そんななかで、意外と知られておらずお勧めなのが、企業の奨学金だ。給付型が多く、貸与でも無利子の奨学金事業をしている企業がいくつもあるのだ。母体の企業が100%資金を出しているもの、創業者などの個人財産をもとにしたものなどがあり、公益財団法人を設立しているケースが多い。この中から特色のあるものを紹介しよう。

 三菱UFJ信託銀行を母体にした公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団(旧・山室記念会)は1953年に設立し、60年の歴史を誇る。設立以来、一貫して返還義務のない奨学金給付を続けている。同財団の羽成一夫常務理事はこう話す。

「設立年の奨学生は2人でしたが、その後逐次増加し、91年以降は毎年330人以上に給付しています。昨年度までの奨学生総数は5582人で、このうち外国からの留学生が612人。銀行が設立母体であるため、当初は経済、法、商など文系学部の学生に給付していましたが、現在は医学部と薬学部を除く理系と文系の割合がほぼ半々です」

 旧帝大や有名私大など全国の指定48大学の学長から推薦を受けた大学2年生以上の学生が対象となる。

「大学からの推薦を重視し、最終的に奨学事業選考委員会が決定します。1年次の成績が優秀な学生が推薦されてきますから、みなさん勉強熱心です。首席で卒業した学生もいます」(羽成常務理事)

 奨学生の義務は年1回の面談だけだ。奨学生を呼び出すのではなく、財団の担当者が奨学生を訪ねる。

「単に資金援助を行うだけではなく、人との出会いを大切にしてもらい、社会で活躍できる人を育てたいという思いから、年1回、地区ごとに奨学生の交流会を開催しています。他大学の学生と親しくなれる機会なので、学生も楽しみにしているようです。関東地区ではOB・OG会も実施しています」(同)

 OB・OGには、学者、弁護士、国会議員など社会で活躍する人が多いという。

週刊朝日 2013年11月8日号