2010年11月、愛知県警巡査の米山雄司さん(当時24)が拳銃自殺した。両親の洋司さん(愛知県警警部補、59)と洋子さん(58)は今年8月、雄司さんの自殺は上司によるパワハラや暴力が原因だとして、愛知県警を所轄する愛知県に損害賠償を求める裁判を起こした。両親が子どもを失った悲しみ、無念さを本誌だけに語った。

 祖父も父親も警察官。母親も交通巡視員や少年補導職員として警察に勤めていた。「警察一家」で育った雄司さんが警察官を志したのは自然な流れだった。高校卒業後の05年4月に愛知県警に採用され、警察学校に入校した。

「警察学校の教官から『お前は警察官不適格者だ』と言われ続け、反省文ばかり書かされていました。コピーをとる際に原紙をコピー機に忘れたとか、走るのが遅いといったことが理由でした。教官から『指導』という名のいじめを受けていたんです。それでも私たちに心配をかけまいと思ったのでしょう、週末に自宅に帰っても学校のことは何も話さず、精神的にも相当参っているようでした」(洋司さん)

 
 雄司さんは卒業前の05年9月に辞職した。しかし、それでも警察官の夢をあきらめきれなかった。06年4月、大学に進学し直し、卒業後の10年4月、再び愛知県警に採用された。

「一度辞めていたので、2度目のときは、私もあえて『警察官になれ』とは言わなかったんです。それでも雄司は『やる』と」(洋司さん)

「心に悔いがあったんでしょうね。1度目のとき、警察学校を卒業する姿を私に見せることができなくて、『悪いね』と謝っていましたから。でも、2度目の警察学校では、教官に恵まれたんだなと思いました。表情も生き生きしていました。迎えの車の中でも教官のまねをしたり、学校であったことを話してくれたりしました。そして、卒業式の日。私たちに向かって『どうだ』とばかりに胸を張っていました。それから約2カ月後に、まさか、こんなことになるなんて……。悔しいです」(洋子さん)

週刊朝日 2013年11月8日号