歴史は書物やネットで知るだけのものではない。敵国の兵士たちのために400年以上続いている慰霊行事、体感型の合戦劇、殿様の末裔たちか集う会など、さまざまな歴史イベントが現在話題となっている。江戸時代に各藩にあった「藩校」の教育と精神を現代に伝えるべく、かつての大名家の末裔たちが集まる「全国藩校サミット」も、毎年行われている催しの一つだ。藩校があった都市が持ち回りで開き、今年で11回目となった。

 主催は漢字文化振興協会だ。きっかけは古典中国文学者の石川忠久会長が、訪れた城下町には必ず藩校の伝統を受けた論語の研究会があることに気がついたこと。パソコンの普及による漢字能力の低下を憂えていただけに、藩校関係者を集めたサミットが実現すれば、漢字文化の復権につながると考えたのだ。

 2002年に東京都文京区の湯島聖堂で第1回が行われ、9藩の旧大名家、7藩の旧藩校関係者が集まった。

 ちなみに今年3月に鹿児島市で行われたサミットは、計50藩ほどが参加するほど大きな大会に成長した。実行委員会の新宅和正事務局長は、「準備に2年半。民間から1300万円の寄付を募りました。今年設立から240年を迎えた藩校・造士館の伝統や精神を、パネルディスカッションで見直すなどし、現代の教育を考えるきっかけになったと思います」と振り返る。

 実際に効果も出ているようだ。12年に実施した水戸市では、小学校での論語の暗唱が盛んになったという。

 来年は映画「のぼうの城」で有名な忍城(おしじょう)がある、埼玉県行田市で行われる。

週刊朝日  2013年10月25日号