原発推進の安倍晋三首相に異を唱え、「家庭内野党」の昭恵夫人を援護射撃するかのように、小泉純一郎元首相と進次郎・復興政務官(32)の親子が政界で存在感を示し始めた。

 本誌も10月11日号で報じたように、純一郎氏が「脱原発」を訴え始めているのに対し、沈黙していた進次郎氏が10月7日、ついに口を開いた。名古屋市内での講演で、「私は政府の一員」と安倍政権の方針に従う姿勢を重ねて表明した上で、原発を再稼働する政府・与党方針について、

「なし崩し的に(原発依存に)いって本当に良いのかと国民はじわじわ感じているのではないか」

 と語ったのだ。

 この発言以降、原発輸出、再稼働に邁進(まいしん)する“原子力ムラ安倍内閣”のブレーキ役として、一気に注目を集めている。

 実はエネルギー政策だけではない。「国土強靭(きょうじん)化」を旗印にした公共事業推進(バラマキ)政策についても、被災地を毎月のように訪ねてきた進次郎氏は一線を画している。

 参院選真っ最中の7月11日、岩手県大槌町から被災地の三陸海岸を南下した進次郎氏は、宮城県気仙沼市の離島・大島で巨大防潮堤の見直し派から、建設変更の要請を受けた。被災地では見直し運動が広まっている現状がある。三陸海岸の景観を破壊し、漁業振興にも悪影響を及ぼすと懸念されているのだ。

 進次郎氏を船上で直撃すると、こう答えた。

「見直しのご意見は、もっともなこと。共感する思いもあります。やっぱり人間は自然にかなわないことがあるから、いくら何十メートルの防潮堤を造っても、(それを上回る)津波が来るかもしれない。見直しの声を自分の中で消化し、復興がより早く進むよう、そこに地域の声ができる限り反映されるように努力をしたいと思います」

 被災者の声を進次郎氏が受け止めていることは確かだろう。しかし、結果を出すには、防潮堤建設に邁進する村井嘉浩・宮城県知事、二階俊博・自民党国土強靭化総合調査会会長ら公共事業推進派とのバトルは必至だ。

 父の純一郎氏は首相時代、高速道路建設をめぐって、「抵抗勢力」たる族議員との対決姿勢を示すことで世論を味方につけた。進次郎氏には、たとえサンドバッグ状態になっても信念を貫いてほしいものだ。

週刊朝日 2013年10月25日号