大敗後、表情がさえない橋下市長(写真)と石原慎太郎、松野頼久両氏。みんなの党と民主党はどう動く? (c)朝日新聞社 @@写禁
大敗後、表情がさえない橋下市長(写真)と石原慎太郎、松野頼久両氏。みんなの党と民主党はどう動く? (c)朝日新聞社 @@写禁

 自らの慰安婦発言で、7月の参院選の失速を招いた橋下市長(44)。地元・大阪での堺市長選は、落ち込んだ「維新の会」の党勢回復と、「大阪都構想」を前進させる大きなチャンスだった。

 だが、国会議員を含めた総力を結集して応援した新人候補は、現職市長に約6万票の大差をつけられる惨敗。同日に行われた市議補欠選挙も、自民が推す候補に1勝2敗と負け越してしまった。

「敗因はいろいろありますが、特に都構想の効果に疑問を持たれたこと、強引に物事を進めたり過激な言動を繰り返す橋下市長への嫌悪感が、あったと思います」(維新の会スタッフ)

 敗戦当日はさすがにショックを隠しきれなかった橋下市長だが、翌日の記者会見では、「大阪都構想は引き続き進めていく。来年秋の住民投票まではいきます」と改めて意欲を見せた。

 だが、維新の会の原点ともいえる「都構想」は、風前のともしびだ。

 堺市長選に負けたことで、大阪市と堺市を統合して再編する当初の構想は、大幅に縮小せざるを得ない。財政が豊かな堺市を取り込めないのは大きな痛手だ。

 さらに来春、新たな構想ができあがったとしても、住民投票の前に、大阪府議会・市議会での過半数の賛成が必要となる。

 現在、定数109(欠員4)の府議会は、維新がギリギリ単独過半数を占めているが、3人の“造反者”が出ると危うい状況だ。

「市議会は公明党と組んで過半数です。しかし、公明は都構想には慎重なスタンスで、堺市長選でも維新と手を組まなかった。『落ち目の橋下市長に、協力する必要はない』と突き放す意見も出始めているようです。先週は市の特別委員会で、都構想によるコスト削減効果と府と市が水増ししていた問題も発覚しました。市議たちはカンカンで、もはや住民投票どころか、前段階の議会通過も危うい状況です。こうなると『橋下市長の責任論や辞任論』も出てくるでしょう」(市議会関係者)

 これに右往左往しているのが、再来年4月に統一地方選を迎える「大阪維新の会」の府議・市議たちだ。

 前回の2011年は「維新」「橋下」を掲げるだけで、楽々と当選できる“バブル状態”だったが、頼みの橋下人気は慰安婦発言などもあって、この半年で急降下。

 ならばと、政策や実績のアピールを目論むも、橋下市長の肝いりで導入した民間人の区長や校長への登用制度は、失敗続き。肝心の「都構想」も暗雲が立ち込めている。

 柱となる実績がないまま、来年夏に府議会・市議会で大阪都構想が否決、もしくは秋の住民投票でノーを突きつけられる。その後、最悪のタイミングで選挙突入となる可能性が高いのだ。

 維新の市議がため息交じりに語る。

「橋下さんの快進撃は、不利だといわれた、前回4年前の堺市長選の圧勝から始まりました。それが今回は惨敗。市議補選も負け越し、不敗神話は崩壊。みな、大きなショックを受けています。肝心の都構想が実現しない以上、維新にいても仕方がない。むしろマイナスです。自民党入りや無所属になることを含め、各自が抜け出すタイミングを計っている状況です」

 特に大阪府議会は、次の選挙で定数が109から88へと大幅に減るため、府議たちの混乱ぶりは市議以上だという。

 党の幹事長を務める松井一郎大阪府知事(49)も、「去る者は追わない。議員バッジが大事な人は、自分で人生を考えたらいい」と記者会見で話すなど、“お手上げ”状態だ。

週刊朝日 2013年10月18日号