高知県の四万十市で国内史上初の41.0度を記録し、全国各地で猛暑となった今年。温暖化の影響かという印象も多くの人は受けるかもしれないが、実際は近年、地球の平均気温は下がっていると早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は指摘する。

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 日本の今年の夏は暑かった。猛暑の時に地球温暖化の話を聞かされると信じたくもなるが、半年前は寒い冬だった。話はそう単純ではないのだ。南米ではかつてないほどの猛烈な寒波に襲われ、ペルー、ボリビア、パラグアイなどでは多数の家畜が死んだという。

 1980年代から1990年代の半ばにかけて、確かに地球の平均気温は0.3度ほど上昇した。これは事実である。しかし、温暖化傾向は1997年にストップし、それ以後今日まで地球の平均気温は上昇していない。これもまた、3万点以上の観測地点のデータに基づいてイギリス気象庁とイースト・アングリア大学気候研究ユニットが去年発表した確かな事実である。

 21世紀になっても気温が上がり続けるとのIPCCの予測は見事に外れたのである。日本をはじめ多くの国はIPCCとグルになってCO2の増加による人為的温暖化説を囃しているので、IPCCが崩壊すると困るのだろう。たとえば炭素税を取る根拠はなくなるし、原発は地球温暖化防止に役立つからというウソ話もできなくなるからね。

 9月8日付の朝日新聞に、2100年に気温が最大で4.8度上がり、海面が最大で81センチ上昇するとのIPCCの報告書案が大きく報じられていてあきれた。確か6月の下旬頃にも、北極の海氷面積が、今夏最小記録を更新するとの東大の山口教授の予測が報じられていたと思う。さて事実はどうだったかというと、今年8月の北極の海氷面積は、去年8月に比べ6割も増加した。9月7日付の英国のデイリーメールに写真入りの記事で紹介されている。確認のためにIJIS(宇宙航空研究開発機構と米国・国際北極圏研究センターが共同で運営する北極圏研究サイト)が公表しているデータを調べると、今年の海氷面積は21世紀以後のほぼ平均水準である。

 北極ばかりでなく、南極の海氷面積も今年は過去30年余りで最大なのだ。2010年から11年にかけて急激に減少した時は、過去最大ペースで海氷減少と大きく報じたマスコミも12年から13年にかけて、それを上回るスピードで増加した時は知らんぷりだね。

 日本のマスコミはこと温暖化に関してはIPCCの予測は大々的に報じるのに、観測事実を報じないし、予測が外れたことも報じない。

 IPCCとその信者は今やカルト集団に近い。寒波も豪雨も温暖化のせいだって。でも事実は21世紀に入って地球の平均気温はわずかだが下がっているのだよ。エッ、平均気温が下がるのも温暖化のせいだって。すばらしい考えだ。

週刊朝日 2013年10月11日号