モルガン銀行東京支店長などを務め、2013年7月の参院選で初当選を果たした藤巻健史氏。本誌での連載再開1回目となる寄稿で、安倍晋三首相による消費増税の決断をこう評価している。

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 安倍晋三首相が予定通り、消費税の増税を決断する。本来、野田佳彦前首相のみが、不人気な政策を決断した「憂国の士」として歴史に名を残すはずだったところ、「景気動向を見て判断する」などマッチポンプ的な発言で、「憂国の士リスト」に加わった上に、財務省にも恩を売ったのだから安倍首相もたいしたものだ。

 以上、多少嫌みな言い方はお許しいただくとして、安倍首相のこの判断は評価したい。アベノミクスは失政に終わると思うが、この判断は尊敬に値する。

「消費増税」は間違いなく景気の足を引っ張るだろう。しかし累積赤字の巨大さを考えると、景気動向を考慮する次元の話ではすでになくなっている。MUST(マスト=必ず実行しなければならない)の話なのだ。「増税すれば、景気低迷の地獄が来るかもしれない」のに対し、「増税しなければ『異次元の地獄』が来るかもしれない」ということだ。それを理解した上での安倍首相の決断だと考える。

週刊朝日  2013年10月11日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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