参院選後、いきなり波乱の再スタートとなったみんなの党。動揺が広がっている (c)朝日新聞社 @@写禁
参院選後、いきなり波乱の再スタートとなったみんなの党。動揺が広がっている (c)朝日新聞社 @@写禁

 8月上旬の江田憲司幹事長(57)の更迭に続き、23日には柿沢未途前政調会長代理(42)にも驚愕の“追放令”を下した渡辺喜美代表(61)。強面(こわもて)に豹変し、「みんなの党版夏の陣」の勝者となったが、独裁者ぶりに混乱が広がっている。

 突然の離党騒ぎだった。江田氏と同じく「更迭組」である柿沢氏が、政界再編の方向性の違いを理由に、渡辺代表に引導を渡された。「渡辺代表から『党から出ていってくれ』と言われた」(柿沢氏)。新党立ち上げを視野に入れる柿沢氏に対し、みんなの党ありきの執行部。実際には「陰で執行部批判をしすぎていたから切られた」(党幹部)ともいう。それでも「いきなり離党はやりすぎ。何を考えているのか」との声が党内から漏れ、そして「次の標的は江田氏」との観測が広がった。

 江田氏の「改革案」である党運営の透明化、特に「17億円の政党助成金と2億円超の立法事務費の運用がブラックボックス化している」との“告発”は、党内外に大きな衝撃を与えたからだ。

 だがこうした問題をさらけ出したことに対し、江田支持派の議員ですら、「内輪もめと世間はみている。江田さんは政局観がない……」と手厳しい。

 渡辺派の幹部は、「自分でカネ集めをしようとしない幹事長が、権限だけよこせということ」と切って捨て、さらにこうも続ける。

「参院選だって江田氏は地元神奈川選挙区の松沢成文氏の応援はせず、比例の子飼いばかり応援した。幹事長としてこうした振る舞いが適切なのかどうか」

 江田氏について渡辺氏は、「いい格好ばかりしたがる。自分で率先して動いてから物を言え」と漏らしていたという。

 一方で新執行部を自分の系列で固めた渡辺代表。地盤が固まったように見えるが、江田派を中心に党内には不満が充満している。

「渡辺代表の最大の失点は、参院選の議席を取りこぼしたこと。時間を考えて候補者選定をやれば、東京選挙区も含めて、あと2、3議席は上乗せできたはず。東京の候補者だった桐島ローランド氏を初めて見たのが、選挙後、応援のお礼に来たときという議員がたくさんいます」(江田派議員)

 また、ある所属議員は、「党内のいろいろな点がいいかげん。渡辺代表に決裁を得るにしても、通りがかりでお願いして、『ああ、いいよ』というのが多い。記録が残らないものもある」。

 党の政策勉強会「アジェンダ合宿」を渡辺氏の地元で開催したことも不評だ。「なぜ代表の地元でやるんだという声があり、聞くと、『これが一番安くあがるんだ』という回答でした。それで納得する議員がどれだけいるか」(江田派議員)。

 そして肝心のカネだが、今回の参院選でも「選挙区から求められれば、代表の判断でカネをつぎ込んでいた」(党幹部)という。

 思い起こせば昨年9月、桜内文城衆院議員(47)ら3人の国会議員が日本維新の会に“出奔”したのも、こうした渡辺氏の独裁的手法への不満が一因だった。

 人事を決めた8月7日の両院議員総会ではこうした点を追及され、「すべて善意で党のためにやってきた。信じてください」と渡辺代表は釈明し、前向きに改革に取り組むことを約束した。

 ひとまずは鎮圧に成功。しかし永田町での展望が開けているわけではない。「渡辺代表は政界再編について『時間はかかる。焦ったら負けだ』と言っています」(党幹部)。

 他党から議員を引っこ抜き、大きくなってきたみんなの党。隙を見せれば逆に食われるのが永田町の掟でもある。

週刊朝日 2013年9月6日号