鼻汁や鼻づまりが長引く慢性副鼻腔炎(蓄膿症)。患者数は約100万人といわれている。

 大阪府枚方市に住む倉田敦さん(仮名・44歳)は、2013年1月にインフルエンザを発症した。1週間ほどでおさまったが、その後も鼻汁が出る、鼻がつまるなどの症状が続き、5月ごろには頬のあたりに重い感じがするようになった。近くの内科クリニックに行ったところ、耳鼻科の診察を受けるようにすすめられ、関西医科大学枚方病院の耳鼻咽喉科を受診した。

「鼻腔ファイバースコープ」というカメラを使った鼻の内部の診察や、CT(コンピューター断層撮影)で検査をしたところ、上顎洞(じょうがくどう)という副鼻腔の一つに、膿(うみ)がたまっていることがわかった。

 副鼻腔は、頬や目、額の周辺にある空洞だ。左右にそれぞれ上顎洞、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、前頭洞の四つがある。副鼻腔と鼻腔の間には孔が通っていて、空気や分泌物の通り道となる。

「倉田さんは副鼻腔に炎症が起こる慢性副鼻腔炎でした。インフルエンザウイルスに感染して急性副鼻腔炎になり、それが慢性化してしまったのでしょう。むし歯や鼻炎が長引くことから発症する場合もあります」

 そう話すのは、同科講師の朝子幹也医師だ。

 副鼻腔が細菌やウイルスに感染すると、粘膜が炎症を起こして腫れる。これにより、鼻腔との通気が悪くなり、副鼻腔に膿がたまるようになる。感染は上顎洞に起こりやすく、鼻汁、鼻閉(鼻づまり)、鼻汁が喉のほうに流れ落ちる後鼻漏(こうびろう)がみられ、頬のあたりが重く感じられたり痛んだりする。篩骨洞や前頭洞が炎症を起こすと、目の周りやおでこが痛むこともある。

 ほとんどの場合、短期間の抗生物質や抗菌薬の服用で症状がおさまる「急性副鼻腔炎」だ。だが、炎症が残って2カ月以上続くものがあり、これを「慢性副鼻腔炎」と呼んでいる。

「急性期に副鼻腔炎の症状だと気づかずに、何カ月も症状が続いて、はじめて耳鼻科に来る人も多くいます。慢性化すると鼻汁や鼻閉に慣れてしまう人も多いようです」(朝子医師)

 しかし、放置すれば治療効果が上がらなくなることもある。外気を保温・保湿してきれいな空気を身体に送り込むという鼻の機能も低下するので、肺にも悪影響がある。

「感染症の慢性副鼻腔炎は、耳鼻科で適切な治療を受ければ治る病気です。病状に気がついたら、早めに受診してください」(朝子医師)

週刊朝日  2013年8月30日号