「ニーサ、いよいよはじまります」「ニーサで投資家デビュー!」「できる額から始めよう」――銀行や証券会社はこぞって、そんなテレビCMを放映し始めた。「ニーサ」の言葉を耳にし、目にする機会はここ最近、格段に増えている。

 NISA(ニーサ)とは、来年1月に始まる「少額投資非課税制度」のこと。簡単にいうと、資産運用が今までよりもお得にできるようになる制度だ。

 通常、上場している株や投資信託などを持っているときに出た配当金や、売ったときの利益には、一定の税金がかかる。しかしNISAを使うと、年間100万円までを元手として上場株や、株で運用する投資信託などを買った場合、それらが生み出す配当金や売却益などには税金がかからなくなる。

 政府がこの制度を導入したのは、預貯金に偏る個人資産を投資へと振り向け、経済を活性化する狙いがある。政府は2020年までに、NISAの投資総額を25兆円にする目標を掲げる。

 もう一つの目的が「国民の資産形成の支援」だ。「家計の金融行動に関する世論調査」によると、預貯金など将来への備えがない「金融資産ゼロ世帯」は、4世帯のうち1世帯に及ぶ。「投資なんて関係ない」と思う人も多いだろうが、NISA は、これまで資産形成に無頓着だった人々に向けて作られた制度だともいえる。

 銀行や証券会社の鼻息は荒い。これまで投資をしてこなかった、新たな客層を獲得できるからだ。NISAには専用口座が必要なので、金融機関は、それぞれ独自の口座獲得キャンペーンを展開する。「口座開設者100人に10万円プレゼント」「サッカー日本代表ユニホームのレプリカをプレゼント」といった特典攻勢で囲い込みを図る。さらに、口座開設の手続きに必要な住民票の写しを、開設者に代わって取得するサービスを実施するところまであり、まさにあの手この手だ。

週刊朝日 2013年8月30日号