熱中症にかかるのは人間だけではない。犬やも同じで、高温・多湿で発熱してぐったりし、ひどい場合には死に至る。病状は人間と同じでも、つらさを伝えられず、周囲も気づきにくい。

 車中での発症も多い。「うちの病院に来院される熱中症の犬の半分ぐらいが、車での留守番で発症しています」。こう話すのは、四国動物医療センター(香川県)の入江充洋獣医師だ。エアコンをつけたままなら大丈夫だと思いがちだが、犬の「ある行動」が急激に体温を上げるのだという。入江氏が続ける。

「車内に残された犬は『自分も連れていけ』とばかりに興奮し、窓を必死で引っかいたり、鳴きわめく。ほんの10分で体温が40度を超えることもあり、生死に関わる可能性が出るのです」

 沖縄県のペットメディカルセンター・エイルでは数年前、車中の「魔の10分」で意識を失った若いセッターを開腹したという。「運ばれたとき、体温は42度以上あり、いくら点滴しても下がらない。熱が高すぎて生理食塩水をお尻から入れても難しいと考え、おなかを開いて腸を水に浸して体温を調整したのです」。

 10リットルもの水を使い、奇跡的に犬は助かったというが、こんな事態にならないためにも予防を徹底したい。下記の「ペットを熱中症から守る10カ条」を参考にしていただきたい。

「ペットを熱中症から守る10ケ条」
(1)水分をいつでもどこでも、十分に摂れるように
(2)ハウスやケージを直接日光の当たる場所や熱源のそば、空気のこもる場所に置かない
(3)留守番させるときは必要に応じエアコンをつけ、室内ドアを開けて他の部屋や風呂場などへの「逃げ道」をつくる
(4)車に乗せるときは涼しい居場所をつくり、まめに休憩を
(5)車中にペットだけを残さない
(6)気温が高いときや日陰のない道での散歩はしない
(7)クールスカーフや、冷感服を上手に利用する
(8)舌を出してハアハアしていたら、涼しい場所で休ませ、水分補給を
(9)水を飲んでも熱が下がらない場合は、体を冷やしながら病院へ
(10)旅行に連れていくときは、外出先周辺の動物病院の連絡先を携帯電話に登録
(監修=水越美奈・日本獣医生命科学大学獣医学部准教授)

AERA 2013年8月9日号