自民には思わぬ“誤算”だったかもしれない。大量得票を見込んで比例区に擁立した「有名人候補」が、軒並み撃沈したのだ。

 獲得した比例区18議席の最後のイスに座ったのは、元大阪府知事の太田房江氏(62)。一方、僅差の次点で涙をのんだのは、元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭(わかさ)勝氏(56)だった。コメンテーターとしてテレビ出演も多い若狭氏は、「プロの立場から、法律を国民の考えに合うよう改正していきたい」と主張するも届かず。この落選に、検察の任官同期で、ともに特捜部で捜査に携わった郷原信郎弁護士は、「権力に切り込む特捜の看板を背負って仕事をした人が、自民党から選挙に出るということが好意的にとらえられなかったのでは」と話した。

 2人組の歌手「東京プリン」の伊藤洋介氏(49)は、フェイスブックやツイッターなどネットを駆使した独自の選挙運動を繰り広げた。同じ事務所の後輩で歌手の浜崎あゆみは、約88万人ものフォロワーがいるツイッターで、〈私は彼にかなり!!期待してる!!!〉と呟き、選挙ポスターを持った伊藤氏とのツーショット写真も掲載。効果絶大かと思われたが、結果は約3万7千票にとどまった。

 こんな懐かしい名前もあった。「月面宙返り(ムーンサルト)」を武器に、体操の男子団体で1968年メキシコ五輪から3大会連続金メダルを獲得した塚原光男氏(65)。別の自民候補の決起集会に参加した際には、「もう月面宙返りはできませんが、政治では結果を出します!」と、聴衆を沸かせていた。しかし、約2万9千票で有言実行はならず。

「この国のために何かしたい! みなさん力を貸してください! 失礼します! 押忍(おす)!!」と街頭演説で叫んでいた元格闘家の佐竹雅昭氏(47)もノックアウト。格闘技界の大先輩、アントニオ猪木氏とはモノが違ったということか。

週刊朝日 2013年8月2日号