共産党の最年少国会議員となった吉良氏 (c)朝日新聞社 @@写禁
共産党の最年少国会議員となった吉良氏 (c)朝日新聞社 @@写禁

「一人ひとりの声を必ず国会に届けます!」

 大激戦の東京選挙区で当選を果たした“プリンセス”吉良佳子(よしこ)氏(30)は、女性の支援者と抱き合って喜んだ。

 9年間議席を失っていた大阪でも、36歳の辰巳孝太郎氏が当選。「大阪で止まっていた時間を動かした」と勝利宣言した。

 共産党関係者が、「こんな手応えのある選挙は10年ぶり」と顔をほころばせるように、6月の東京都議選で議席を倍増させた共産党は、今回8議席を獲得し、改選前の3議席から大躍進した。とくに東京、大阪、京都の3選挙区で新人が当選。選挙区での議席獲得は12年ぶりだ。

 志位和夫委員長は会見で興奮気味に語った。「二つの大都市で若い候補者が議席を得ることができました。重要な前進です」。

 躍進の要因の一つは「自共対決」を演出できたことだろう。原発や消費増税などの主要政策で自民党との違いを鮮明に打ち出し、反自民票の受け皿となった。

 そして、もう一つは共産党らしからぬ広報戦略だ。ネット選挙が解禁された今回の参院選。共産党の特設サイト「カクサン部!」が話題を呼んだ。数々の「ゆるキャラ」が登場し、政策をゆるーく「拡散」する。メガホンを持って叫ぶカクサン部長の「カクサン」を筆頭に、サングラスとトレンチコートがトレードマークの「雇用のヨーコ」、10人の子どもを持つ、パーマをかけた「小曽館育子」、米俵の「俵米太郎」……。これが長年のお堅いイメージとのギャップで受けた。

 同党宣伝局の若手職員が広告会社と協議して立ち上げたというサイト。他党に比べ、専従職員が多いといわれる同党ならではの強みが生きたのだという。「若い層に支持が広がるキーステーションになった」(同党広報部)。

 若い女性候補者やイケメン候補を擁立した効果もあった。前出の吉良氏は被選挙権ぎりぎりの最年少候補で、知的で清楚なルックス。大阪の辰巳氏も短髪に日焼けした肌から白い歯がこぼれるイケメン。比例区で落選したものの、やはり最年少30歳の池内沙織氏は“メガネ萌え“系の美女だ。

 元共産党幹部の筆坂秀世氏が、こう語る。「かつては弁護士や医師など社会的に信頼のある職業の人か、労働組合の委員長などバリバリの闘士が候補者の中心でした。若く、行動力のある候補者を選んだことは、有権者にフレッシュなイメージを与えた」。

 もっとも、議席を伸ばしたといっても、非改選を入れて、まだ計11議席。「巨大与党」との対決軸を形成できるのか。「憲法改正、原発、消費増税など特定の分野で、ほかの野党との共闘を呼び掛けることができるかどうか。唯我独尊的に『共産党だけが正しい』と言うだけではダメ」(筆坂氏)。

「らしからぬ」共産党が、さらにひと皮むけるか。

週刊朝日 2013年8月2日号