維新のツープラトン体制も風前の灯か (c)朝日新聞社 @@写禁
維新のツープラトン体制も風前の灯か (c)朝日新聞社 @@写禁

 改選の2議席を上回る8議席を獲得した日本維新の会だが、7カ月前の衆院選とは、明らかに潮目が変わっていた。自公を過半数割れに追い込むという目標を果たせなかった橋下徹共同代表(44)は、地元大阪で厳しい表情で会見に臨んだ。

「絶対に勝ちとは言えない。自民党が支持を受けたということ。勢いを止められなかった」

 兆しは既にあった。4月の兵庫県伊丹、宝塚両市長選では独自候補が落選。そして最大の逆風要因となったのが、橋下氏の従軍慰安婦を巡る一連の発言だった。6月の東京都議選では惨敗を喫し、参院選と同日選となった兵庫県知事選では候補者擁立を断念した。

 今回の参院選では、大阪で東徹氏(46)がトップ当選、兵庫でも元民放アナウンサーの清水貴之氏(39)が議席獲得と、「お膝元」では何とか踏みとどまり、存在感を見せた格好だ。

 自身の責任問題について問われた橋下氏は、「代表という立場で誇れる結果ではない。トップの僕に対する(有権者の)信任、信頼がなかった」と語った。進退については執行役員会で話し合うと繰り返した。

 一方、共同代表の石原慎太郎氏(80)は、「皆さまのご協力のおかげでまずまずの成果だった。維新の会の眼目の憲法改正に大きなめどがついた」と、今回の選挙に合格点を与えたようだ。

 橋下氏の去就についても、「辞める必要はない」と一蹴し、「憲法改正を一緒にやっていく」と、危倶される橋下氏周辺との分裂も否定した。

 しかし、選挙前から聞こえていた党内の不協和音は、今回の結果を受けて、より顕在化してくるのではと、維新の会関係者は明かす。「橋下さんは、長老が幅をきかせている旧太陽の党組とは別れて新党の結成をもくろんでいるのでは。そこに民主党やみんなの党から人材を引っ張ってくる。みんなの江田憲司さんには5、6人付いてくるんじゃないかという話です。民主だって、この結果なら、軒並みどこかに脱走したいと思っているでしょう。新党の代表には、賞味期限のまだ切れてない橋下さんが就く」。

 9月の堺市長選の結果次第で、一気に分裂が加速するとの見方もある。自民一人勝ちの中で、今後の橋下氏の動きが「野党共闘」のキーになってくるのだろうか。

 もう一つの不安材料は、石原氏の健康状態だ。選挙戦終盤に体調不良を訴え、予定された東京選挙区の小倉淳氏(55)の「最後の訴え」にも姿を見せなかった。投開票日も、民放の個別インタビューはすべてキャンセルした。会見で健康問題を問われると、表情をこわばらせ、「体にひびが入って、十全の活躍ができなかった」と述べた。今後の国会活動について尋ねられると、「医者と相談してやっている。大丈夫だ」と語気を強め、重ねて病名を問われると、「政治家にとっては致命的な問題だ。医者に聞いてくれ」とつっぱねた。

 内憂外患の維新。何とも不安定な舵取りがしばらくは続いていきそうだ。

週刊朝日 2013年8月2日号