都内の雑貨店では50種類を超える耳掃除グッズが売られていた。先端部分もさまざまだ(撮影/写真部・植田真紗美)
都内の雑貨店では50種類を超える耳掃除グッズが売られていた。先端部分もさまざまだ(撮影/写真部・植田真紗美)

 多くの人が、耳を衛生的に保つためにやっているはずの耳掃除。だが実は、それにより耳の中に「カビ」が生えてしまうこともあるという。金沢医科大学耳鼻咽喉科の鈴鹿有子教授に話を聞いた。

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 耳の穴にカビが生えることがあります。正しくは耳真菌症といい、足の水虫と同様、カビ胞子がはびこる。かゆくなったり湿っぽくなったりし、外耳炎の一因になります。深刻ではないものの、かかると厄介なのは、しつこく、何度も繰り返すからです。

 一番の原因は、きれいにしすぎることと触りすぎ。清潔を心掛けたつもりが、カビるなんて意外ですか。でも耳をよく掃除する人や、耳を触る癖のある人に本当に多いんです。

 シャワーの後に綿棒で耳の中を軽く拭く。そこでやめておけばいいのに、気持ち良いからといって、メンソールの化粧水を綿棒に浸して耳にまた入れる。そうなると、皮膚の恒常性が変わってしまいます。綿棒で飽き足らず、耳かきでゴリゴリかいて傷をつくるのもだめね。カサブタになってもかいて剥がして……と悪循環に陥る。

 右利きの人は無意識に右耳を触る癖がありますね。必要以上に耳を触り過ぎると、本来の良い状態が保てなくなるんです。まさに耳の“環境破壊”。そうなると、細菌や真菌が繁殖しやすくなるわけです。

 ほかにもカビやすい原因はあって、例えば音楽を聴くためのイヤホン。近頃のものは音質や臨場感を求めて気密性が高く、結果、耳に栓をしてしまう。性能がよく違和感がないから長時間耳に入れますよね。すると換気が悪くなり雑菌が繁殖しやすい。耳全体を覆うヘッドホンがお勧めです。

 日常的にイヤホンを入れる補聴器も、蒸れてカビを招くことがあります。今は進化して種類が増え、耳の中に空間ができるソフトタイプが主流。昔ほどカビの発症例は多くありませんが、中耳炎など耳の病気をもともと持っている方も多いのでかかりやすいのです。

 原因は何であれ、耳が急にかゆくなったり湿ったりしたら耳鼻咽喉科を受診し、抗真菌用の軟膏等を処方してもらいましょう。カビと聞くと皆さんギョッとするけど、神経質になりすぎないことが大事。今の季節は毎日髪を洗う人も多いでしょうが、ドライヤーの風を当てて乾かすのも一案ですよ。風は熱すぎないよう気をつけて。

「耳毛」も耳内の環境を守るためにある。外に出てきたからといって無理してひっこ抜き、バランスを崩さないようにしましょう。

週刊朝日  2013年7月26日号