発達障害は親子での受診も大事

 専門家の推計によると、注意欠如・多動性障害(ADHD)を含め、発達障害の人口は5%程度と考えられている。さらに医療や福祉の面では対応が必要な「障害」には至っていないものの、その傾向がある人を含めると、少なくとも10%に及ぶ。

 福島県に住む大学生、加山真司さん(仮名・20歳)は小学生のころ、授業中に席を離れたりして落ち着きがなく、友達と遊ぶことが少なかった。小学校5年生のとき、息子を心配した母の由美子さん(同・48歳)が児童相談所から紹介された星ケ丘病院精神科に連れていったところ、同院の星野仁彦医師からADHDと診断された。

 ADHDは、「多動性(いつも落ち着きがない)」「不注意」「衝動性(後先を考えない)」を基本特性とする発達障害だ。以前は年齢が上がると多動が目立たなくなるため、大人にはいないと考えられていたが、最近では大人のADHDが増えている。

 発達の特性は遺伝することが多い。星野医師がそのことを由美子さんに伝えると、夫の剛さん(同・52歳)の言動にも思い当たる節があるという。

 剛さんは従業員数名を抱える店の経営者で、従業員に対して些細なミスでも大声で怒鳴ることがあり、由美子さんや真司さんにも手を上げてしまうこともあった。また車の運転が危なっかしく、軽い接触などの事故も起こしがちだったのだ。

 由美子さんに促されて受診した剛さんも、ADHDと診断された。そこで星野医師は、量を変えて、父子に同じ薬物を処方した。

 ADHDの治療薬として認可されている薬には2種類あり、これまではいずれも18歳未満の子どもにしか認可されていなかった。だがストラテラ(一般名アトモキセチン)は昨年、大人にも保険が使えるようになった。集中力が必要とされるときなどに分泌される神経伝達物質・ノルアドレナリンの巡りをよくする作用がある。

 もう一つのコンサータ(一般名メチルフェニデート)も現在、大人にも保険が使えるよう承認申請中だ。この薬が効く仕組みは詳しくわかっていないが、中枢神経を刺激し活動性を上げるとされる。自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)にも使用されるが、効果はADHDの場合より少し劣る。

 当時小学生だった真司さんは、リタリン(現在のコンサータと同じ成分の薬)を服用したその日から、ピタッと多動が治まり、学校の授業を聞いていられるようになった。その後、勝手な行動をとるなどの問題が8割以上治り、服用から2、3年で薬が不要に。現在は医科大学に通っている。一方、父の剛さんも、暴言などが見られなくなり、車の運転も落ち着いた。

「中学生以前の子どもであれば、薬物療法を開始して数年で薬をやめられることがほとんどですが、大人の場合は飲まなくなるとすぐに症状が出てしまうので、飲み続ける必要があります」(星野医師)

 星野医師は、自分の子どもの発達障害を疑ったら、親子で受診することが大事だと話す。

「発達障害は、本人の遺伝的な要素と家庭や職場の環境の悪さが重なることで、問題が生じます。持って生まれた要素は変えられませんが、薬物と心理教育で問題を少なくすることは可能です。発達障害の子どもの親は同様の症状、特性が見られることが少なくありません。その場合、親自身の治療を開始することが大事ですし、親が発達障害であってもなくても、子どもの扱い方を知ることで家庭環境が良くなり、いじめやひきこもりなどの二次的障害も防げます」

週刊朝日  2013年7月12日号

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