ジメジメする梅雨時以降、水虫になる人が一気に増える。白癬菌(はくせんきん)というカビが皮膚の角質に感染し、痒(かゆ)みやジクジクした湿疹を生じさせるせいだ。実際に多くの人が体験する最もポピュラーなカビ感染症の一つといえるだろう。

 抗真菌薬を根気よく使えば治るが、我慢できないほどの症状でないから、と放っておいてしまうケースもあるはずだ。

 順天堂大学総合診療科(感染症・細菌学)先任准教授の菊池賢医師は話す。「健康な人なら不快なだけで、命まで取られるようなことはない。ただ、糖尿病やがんなどで免疫力の落ちている人は注意が必要です」。

 白癬菌自体は、体温下では生きられないために角質層にとどまっている。しかし、水虫のジクジクした部分から、ブドウ球菌や連鎖球菌といった体温でも生きられる細菌が侵入し、足が壊疽(えそ)を起こしたり、全身に細菌が回って命を落としたりする危険性もあるという。「免疫力が弱っている人はもちろん、そうでなくても家族にうつしてしまう。しっかり治しましょう」(菊池氏)。

 水虫は、足ふきマットや畳に白癬菌がついていれば感染する可能性が出てくる。家族に水虫患者がいなくても、あちこちに感染する機会があるということだ。しかし、白癬菌が皮膚の表面から角質層の中に侵入してくるまでには丸1日はかかる。1日1回、風呂に入るなどして菌を洗い流せば、感染はほぼ防げる。

「白癬菌は足の裏だけでなく、頭や首筋、わきの下など全身に感染するので、体を清潔に保つようにしてください。ただし、軽石やナイロンタオルでゴシゴシこすりすぎないこと。皮膚に細かな傷をつけ、そこから白癬菌が感染しやすくなってしまいます」(菊池氏)

週刊朝日  2013年7月12日号