若年層、つまり30代から50代で発症する「若年性認知症」が増えている。働き盛りの会社員や主婦を襲う恐るべき病だが、18~64歳で発症した患者は全国で推計約3万8千人いるとされる。

 産業医科大学若松病院神経内科・心療内科診療教授の魚住武則氏はこう話す。「最初に本人が気づく症状としては、新しいことが覚えられなくなり、少し前の出来事も忘れてしまうケースが最も多い。考えるスピードが遅くなって二つ以上のことを考えられなくなることもあります」。

 このほか、頭痛やめまい、不眠を訴えたり、自己中心的で頑固な性格になったりする場合もあるという。このように、認知症と結びつきにくい状態から症状が進行する患者も少なくないという。ひきこもりや暴力、暴言といった症状も加わってくることもある。

 若年性認知症の特徴として、老人性が徐々に進行するのに対して、症状が悪化するスピードが速い。

「30代で発症して、10年後には寝たきりになってしまう患者もいます。患者が家計を支える立場であれば、仮に働けなくなると、経済的に苦しくなる。子供に与える影響も大きくなってしまいます。患者本人だけではなく、介護する人のケアも大切です」(魚住氏)

週刊朝日 2013年7月12日号