会見した大産大の第三者調査委員会は記者の突っ込みにタジタジ (c)朝日新聞社 @@写禁
会見した大産大の第三者調査委員会は記者の突っ込みにタジタジ (c)朝日新聞社 @@写禁

 本誌がスクープした大阪産業大学(大阪府大東市)の“やらせ受験問題”を調査した第三者調査委員会が6月末、「受験した生徒に謝礼を払ったが、大学の関与はなし」と矛盾だらけの結論を公表した。出席した記者らが「笑うしかあらへんな」と呆れ果てたトンデモ会見をジャーナリストの西岡研介氏徹底検証する。

「第三者調査委員会の会見は予想通り、『大学の関与はない』という筋書き通りの内容でしたね。もっとも、調査委には何の期待もしていなかったので、失望もしてませんが……」

 こう話すのは、大阪産業大学(以下「大産大」)の「やらせ受験」を主導し、その後、内部告発した同大の付属高校、大産大附属高校(以下「産高」)の元教頭である。

「やらせ受験」問題とは、大産大が、経営学部の定員超過による文部科学省の補助金カットを免れるため、2009年度の同学部の一般入試で、他大学への進学が決まっていた産高の成績優秀な生徒に複数回受験させ、合格後、入学を辞退させることによって、定員調整をしていた問題だ。9人の生徒が、前・中・後期の計6回の試験を31回受験し、延べ20人が合格。全員が入学を辞退しており、生徒には1回につき5千円の“日当”が支払われていた。

 事態を重くみた文科省の要請により、大産大は「第三者調査委員会」を設置した。調査委は約3カ月にわたって関係者の聴取などを行い6月25日、その調査結果を報告する記者会見を開いたのだ。

 本誌も会見への参加を申し入れたが、大産大は「会見への出席は、大阪科学・大学記者クラブなどの加盟社に限る」の一点張り。その理由を尋ねても「コメントを差し控えさせていただきます」(大産大綜合企画室学園広報課)ときたものだ。私(筆者・西岡)も新聞、雑誌で20年以上記者をしてきたが、これほどまでに閉鎖的な学校は知らない。

 そんな大学が立ち上げた調査委は案の定、「弁護士1名、マスコミ関係者1名、教育委員会関係者1名、学校関係者2名の計5名」(同前)とするだけで、メンバーの氏名はもちろん、所属すら公表されないという極めて異例のものだった。

「25日の記者会見で初めて5人の氏名と所属が明かされましたが、調査委主催の会見であるにもかかわらず、『マスコミ関係者』の元産経新聞論説委員は欠席。公表された『調査結果』も杜撰(ずさん)極まりないもので、会見では記者からの質問や批判が相次ぎました。しかしその回答のグダグダぶりに、皆、『もう、笑うしかあらへんな……』と呆れ果てていました」(出席した記者)

 さすがは「笑都」といわれるナニワの大学だ。その「お笑い記者会見」の模様を、複数の記者の証言を基に再現してみよう。

 会見の冒頭では、土橋芳邦理事長(元「クボタ」社長)が謝罪。続いて元大津地検検事正で、いわゆる「ヤメ検」弁護士の山本恒己委員長が報告書を読み上げた。その中で調査委は「やらせ受験」について、大学側の関与はなく、補助金カットを免れるために行われたのでもない――などと結論付けたのだが、読み上げが終わると早速、記者から質問が相次いだ。

 本誌がこれまで報じてきた通り、そもそも今回の「やらせ受験」は大産大の補助金カットの定員倍率の読み間違いから始まった。文科省では09年度以降、その基準を原則「定員の1.3倍」としたが、09年度だけは経過措置として「1.37倍」となっていた。ところが大産大では実際に入学試験を取り仕切る「入試センター」の幹部までが、この文科省の経過措置に気づかず、「1.3倍」と思い込んでいた。

 前出の元教頭も本誌の取材に対し、「当時は私も含め関係者全員が『1.3倍』と認識していた」と証言。さらに12年7月に学内で開かれた「第5回入試委員会」でも、やらせ受験を疑う委員の質問に対し、入試センターの幹部がこう回答した議事録が残っている。

〈09年度は経営学部の入学者数が、当時の補助金の限度である学則定員1.3倍を超える心配があった〉

 ところが、調査委は「当初から1.37倍と承知していた」とする大学側の主張を鵜呑みにし、「入試前に補助金カットの恐れは解消していた」と結論付けた。

 これについて複数の記者から「そもそも今回の問題は大産大が基準を1.3倍と思い込んでいたから起きたのではないのか」「今回、大学側から突然、『1.37倍と承知していた』という話が出てきたのは不自然だ」などと立て続けに質問を浴びせられた山本委員長は度々、沈黙。最後には「一方(元教頭)が調査協力しないから、残った資料で判断するしかないじゃないですか」と、調査が不十分に終わったのは、元教頭が聴取に応じなかったからとでも言いたげに答えたのだ。

週刊朝日 2013年7月12日号