田原総一朗 今回の参院選に「おもしろみがない」理由を明かす 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗 今回の参院選に「おもしろみがない」理由を明かす

連載「ギロン堂」

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 ジャーナリストの田原総一朗さんは、各野党やマスメディアはアベノミクス批判ばかりだが、対案を示していないのでアベノミクスに期待するしかないと話す。

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 今やアベノミクスは、各野党はもちろん、マスメディアでも批判一色になっている。アベノミクスを、“アホノミクス”と言い切る学者まで登場している。

 安倍晋三首相がアベノミクスを打ち出してから、円は1ドル=78円台から103円まで約30%も安くなり、日経平均株価は8000円台後半から1万5600円台と約80%も急上昇した。この時期、つまり5月下旬まで、アベノミクスはまるですでに成功したかのように礼賛された。ところが5月23日に株価が急落して以降、乱高下が繰り返されると批判が出始めて、6月14日に成長戦略と骨太方針が発表されると、「期待はずれ」との失望感が一挙に強まった。

 確かに、14日の発表内容には私自身少なからず不満だった。農業でも医療でも改革は先送りとなり、太い柱のはずだった地方銀行の経営体質改革や上場企業に実力のある社外取締役を入れる案も先送りとなってしまったからだ。

 数ばかり多い地銀を思い切って再編成し、中小企業経営者の個人資産まで担保にとる金貸し業ではなく、担保なしでリスクをとるコンサルタント業に転換すべきだという項目が抜け落ちてしまった。殿様のような経営者にノーと言える社外取締役を入れることを法律で定めるという項目も、産業競争力会議で経団連系の委員の強い反発で見送られてしまったのだ。これでは失望感が強まり、株価が急落するのは当然である。

 だが、各野党やマスメディアのアベノミクス大批判に対しては、強い違和感を覚えざるを得ない。批判するならば、なぜ対案を示さないのか。

 はっきり言って、この20年間、日本の経済は確たる戦略のないままに“じり貧”状態を続けてきた。そして多くの経済学者たちも、その状態に甘んじていたのである。そこへ安倍首相が「経済を成長させる」とアベノミクスを打ち出したのだ。私の知る少なからぬ経済学者たちは「狂気の沙汰だ」と吐き捨てた。日本経済が成長などするはずがない、というのである。株価が急騰して、彼らは意気消沈していた。その彼らが元気を取り戻して、アベノミクス批判をぶちあげている。

 あるいは「狂気の沙汰」なのかもしれないが、なすすべのない“じり貧”状態での安倍首相のチャレンジを、私は評価している。だからこそ各野党やマスメディアには、批判するのならば、堂々と対案を示せと言いたいのだ。

 近づく参院選挙に際し、各野党が対案、政策提案をすれば、国民は選択することができる。しかし、現在のところ批判は氾濫しているが、具体的な政策提案は出ていない。国民にとっては選択肢がないわけだ。だから参院選挙は、政党の数は多くても、争点らしき争点がなく、なんともおもしろくない選挙になりそうである。そして、このような状態では、国民としては、たとえ「狂気の沙汰」であっても、アベノミクスの成功を願うしかないことになる。

 それにしても、14日発表の成長戦略と骨太方針は期待はずれだった。医者、金融業者、経済連関係者などが思い切った改革に反対し、参院選で反自民にまわることを恐れて妥協したのである。アベノミクスを成功させるためには、安倍首相はおびただしい数の既得権者たちと徹底的にたたかわなければならないのだが、果たしてそれができるだろうか。

週刊朝日 2013年7月5日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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