プロゴルファーの松山英樹が全米オープンでトップ10に輝いた。その実力を認めるベテランプロゴルファーの丸山茂樹は、松山の強さの秘密と今後への期待を明かした。

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 あれぐらいの距離のパットが決まりだしたときって、すごくいい状況なんですよ。「来たー!」っていううれしさでしょうね。もう日本では優勝もしてるんで、本人も分かってるんですよ、あの感じが。だから続く12番でも、決して易しくない約4メートルのバーディーパットを沈めました。

 聞くところによると、日本を出る前から、相当アプローチを練習したみたいです。僕も含めて、アプローチに難があると指摘した声に耳を傾けて、きちんとバランスよく振りきる練習をしたようです。 20ヤードぐらいの寄せも必死でやってたみたいですね。周りの言葉を受け入れられるポケットがあるんですね、彼の頭の中には。「こういうことを言ってる人がいるから、試してみようか」という素直な心も彼の強みでしょう。

 ローズが17歳でプロ転向したのとは対照的に、英樹は昨季までアマチュアでゆっくりと土台を作ってきました。2011年のマスターズで日本人として史上初のローアマチュアに輝き、三井住友VISA太平洋マスターズを制して、今年4月にプロ転向。いい順序できてる。

 彼はツイてると思うんですね。同学年の石川遼の陰に隠れて、変な脚光を浴びなかったのが大きい。それでプロデビューして一回もトップ10を外してない訳ですから。決してキャラクターにスター性はないんだけど、実力にスター性があるから何の問題もない。

 全米オープン直後の世界ランキングは49位まで上がって、10月にある団体対抗戦「プレジデンツ杯」の世界選抜(米国、欧州を除く世界ランク上位10人と主将推薦の2人)メンバーに地力で入れるところまできました。全米オープン直後で7位にいますから。いやあ、うれしいですね。

 実は僕、今年の大会で、主将のニック・プライス(ジンバブエ)から副将に指名されたんです。主将と副将はプレーしないのですが、英樹にはメンバー決定の8 月中旬まで10位以内をキープしてもらって、一緒に世界選抜を盛り上げたいです。

 この試合に出ると、強力な世界のトップ選手の絆の「コミュニティー」に入れるんです。世界選抜だけでなく、戦う相手の米国選抜のメンバーとも仲良くなる。すると英樹がPGAツアーに参戦したときに、いろいろ助けてもらえるんです。僕自身が2度出場して実感していますが、こんなに心強いことってないですよ。

週刊朝日 2013年7月5日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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