猪瀬直樹東京都知事 (c)朝日新聞社 @@写禁
猪瀬直樹東京都知事 (c)朝日新聞社 @@写禁

 空前の434万票を得て都知事となった猪瀬直樹氏(66)の“落日”が迫っている。都議選後、自民党が態勢を整え、着々と包囲網を張り巡らせているのだ。かつて、猪瀬氏の副知事時代のパフォーマンスにより、「いつも悪者扱いされ、引き立て役を演じさせられてきた」という背景もある。

 対立案件では自分がかかわった政府のペーパーを自民党控室に持ち込み、「これを読んで勉強してくれ」と挑発したことも。猪瀬氏をよく知る、ある首長はこう警鐘を鳴らす。

「敵をつくってあおる手法は、本人に相当な人気がなければ本気で向かってくる敵を増やすだけだ。石原さんという弾よけがなくなったのだから自重しないと。でも自分に人気があると“誤解”しているから、都議会対策なんかできるはずもない」

 一方の猪瀬氏にはどうも切迫感がなさそうだ。6月13日夜、猪瀬氏は首相公邸を訪れ安倍晋三首相(58)らと会食した。

「猪瀬さんは上機嫌だった。自民党総裁である安倍さんを押さえておけば、地方組織の一つで、都議が所属する都連など怖くないと考えているのだろうが、思い違いだ」(周辺)

 都連は東京都の年間12兆円もの予算を差配する党内でも特別な存在だ。会長は石原伸晃環境相(56)が務め、幹事長には“都連のドン”内田茂氏(74)が座る。だが、こともあろうに都議選中、内田氏の地元千代田区では対立候補である無所属小枝寿美子氏(49)のポスターに「私も応援しています」という猪瀬氏の写真が貼られていたのだ。だが、猪瀬氏は悪びれた様子はなかった。

「知事選のときに応援してくれた、そういう方々に対して写真の使用は認めている」(14日の定例会見)

 それに対し、自民党都連幹部は“恨み骨髄”だ。

「無神経すぎる。本気でわれわれと戦おうとしているのか!」

 議会の解散や知事選を覚悟して、自民党がどこまで本気で不信任決議案を通すつもりなのか。当の内田氏を直撃すると、「都議会と二元代表制なんだから、それがわからないようじゃダメでしょ」と意味ありげに語っていた。

「しばらくは不信任や問責決議案をちらつかせ、猪瀬さんから主導権を奪えばいい。都内に本人が思っているような猪瀬ブームなど起きていないから、難しくない。どの段階で知事がそれを自覚し頭を下げてくるかだ」(都選出の国会議員)

 この先、猪瀬氏を待ち受けるのは、身もやつれるようなギリギリの神経戦だ。

週刊朝日 2013年7月5日号