現地の言葉がわからない国に行くなら、「添乗員付きツアー」が安心で心強い――そう思って利用する人も多いはず。それだけに驚きの事態が起きた。今年1月、英国の空港でツアー客A氏が置き去りにされていた。そして旅行会社は「過失はない」と言うのだ。中高年を中心に人気の添乗員付き海外ツアーには、盲点があった――。

 添乗員の経験を持つ観光ジャーナリストの千葉千枝子さんは、「添乗員の安全管理や対応には問題があると思います」と、ばっさり。次のように指摘する。

「ギリギリの旅程でツアーを催行している旅行会社はほかにもあります。アクシデントひとつで、A氏のように乗り遅れることは十分考えられる。20年ほど前から、旅行業界の価格競争は激化しており、極限までコストカットされていれば、万一の費用や旅程、現地要員に余裕がない。とくに格安ツアーは、経験の浅い契約添乗員にツアー運行の全責任を課していることが多く、『お客様』が後回しになりがちなのが実情です」

 A氏のトラブルがメディアで報じられた直後の6月7日、A氏の訴訟代理人の斉藤隆男弁護士のもとに、「私も同じ目に遭った」との相談が寄せられたという。斉藤弁護士はこう話す。

「かつて高嶺の花だった海外旅行もずいぶん手軽になりました。しかし、品質面はまだ過渡期にあるようです。“安かろう悪かろう”ではいけないのであって、とくに緊急時の安心と安全の確保は品質の最低ラインです。旅行会社はこれを保障する義務があります」

 残念ながら、現状の海外ツアーは玉石混交だ。価格や渡航先も気になるが、品質もしっかり見極めたい。

週刊朝日 2013年6月21日号