だれもが介護を必要とせず、寝たきりにならないように、齢(よわい)を重ねたいと願っている。だが、それを脅かす病気がある。骨の内部がスカスカになる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)だ。国内の患者数は約1300万人で、女性が7割以上を占めている。その骨粗鬆症の治療が転換点を迎えている。

 山王メディカルセンターの太田博明・女性医療センター長は、「骨粗鬆症は、寝たきり生活への入り口になってしまう」と指摘したうえで、こう話す。

「太ももの骨を骨折したお年寄りのうち1割が動けなくなって体が弱り、1年以内に亡くなります。この病気は気がつかないうちに、徐々に悪化していきます。自覚症状がないので、早めに検査や治療を受けたほうがいいでしょう」

 この分野の薬も進化している。まず、骨を壊す細胞の働きを抑える薬が使われる。ビスホスホネート製剤や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる薬だ。1週間に1回だけ、月に1回だけと、服用する回数を少なくできるものもある。

 また、骨を作る細胞の働きを促進するタイプもある。

 今月中には、まったく新しい作用をもつ健康保険が使える薬「プラリア」(商品名)も登場する見込みだ。抗体を使って、骨を壊す細胞が働かないようにするメカニズムである。分子標的薬とも呼ばれているもので、骨粗鬆症の薬では、これまでになかったタイプだ。6カ月に1度、皮下注射をすれば、効果があるという。通院が少なくなるので、患者のメリットは大きいだろう。

週刊朝日 2013年6月14日号