小沢一郎氏(撮影/写真部・松永卓也)
小沢一郎氏(撮影/写真部・松永卓也)

 自民党は憲法改正に意欲的だが、小沢一郎・生活の党代表は順序があべこべだと憲法改定に反対だ。週刊朝日の独占インタビューで語った小沢氏の本音とは……。

*  *  *

――橋下徹・日本維新の会共同代表は現在、逆風の中にありますが、橋下さんには当初、官僚政治の閉塞状況を打ち破ってくれるのではないかという期待がありましたね。

 そう、そう。統治の機構を変えるんだと、僕が20年前から言っていたのと同じ言葉を使ってしゃべり始めたんだね。官僚支配から政治主導に統治の機構を根本的に変える、という掛け声だったんだ。だけど、そのわりにはだんだん自民党と同じになってきてしまいました。しかも、ウルトラ右的な体質がだんだん出てきちゃった。本音が出てきたみたいな。

――そうですね。

 今度の橋下さんの(従軍慰安婦問題などの)発言で、維新人気っていうのはまったくなくなっちゃうんじゃないかな。

――橋下さんは自民党と共同で憲法96条を変えようという考えです。

 政治姿勢の面から言うと、自民党と同じような思想、発想、体質が具体的に表れてきたのではないかと思います。憲法の問題もTPP(環太平洋経済連携協定)の問題も消費税の問題も、もはや自民党と一緒でしょう。

――では、安倍晋三首相が強い意欲を見せる96条改正についてはどう考えますか。

 手続きを変えるところから入っていくというのは、まさにあべこべな話です。そこを変えやすくして、じゃあどのように憲法を変えるんだというしっかりとした理念、ビジョン、青写真がまったく見えてこない。ただただ変えやすくするために発議要件を全議員の3分の2から2分の1にということでしょう。3分の2という要件は憲法の中で他の問題についてもいくつかあります。地方議会でも、民間でもいっぱいあるんです、3分の2というのは。

――なるほど。

 ほかにもいっぱい使われる3分の2なのに、一番大事な憲法改正だけを2分の1にしちゃうというのはおかしい。真正面の議論とは思えない。だから安倍さんでも橋下さんでも誰でもいいけど、憲法を変えたいのならまずはここをこうしたいと言ってくれなければ。ところがそれがない。

――憲法改正の発議には国会議員の3分の2が必要だというのは、世界各国でも多いんですよね。

 多いですよ。憲法は大事な最高法規だから特にそれだけ慎重にしようということですね。

――そういうことですね。

 うん。そして、自民党の草案なるものを見たら、変えようとしているのは主として9条だけなんですね。国防軍を持つということだけであって、あとはほとんど変わっていない。これでは、憲法全体の基本の理念や原則をどのようにしようとしているのかが見えてきません。僕は9条の修正・加筆をするのに頭から反対しているわけではないが、基本の理念がわからないと、まやかしか、いかさまみたいな話になる。

週刊朝日 2013年6月7日号