手術、抗がん剤、放射線療法に続いて、「第四の治療法」と呼ばれる「がんワクチン療法」も新しい段階に入ってきた。

 久留米大学は国内で初めてがんワクチン療法の臨床試験を始めた。今年7月にがんワクチンセンターを開設することを決め、大学をあげてこの分野の研究を支援している。現在、前立腺がんや、脳腫瘍の一種である膠芽腫(こうがしゅ)が主な対象となっている。

 がんワクチン療法とは、どんなものか。通常、体内に異常な細胞ができると、免疫システムが稼働して、消滅させる。がん患者は免疫能力が低下するため、その代わりに人為的にキラーT細胞を活性化させて、がん細胞をやっつける。

 がん細胞の表面には「がん拒絶抗原分子(ペプチド)」というアミノ酸の塊がある。これを目標にしてやれば、キラーT細胞が病巣にたどり着きやすくなる。

 簡単にその仕組みを説明しよう。がん患者から血液をとって、どんなペプチドが多いのかを特定する。

 その結果をもとに、もっとも多いペプチドを大量に注射すると、そのペプチドが、もともと体内にあったキラーT細胞を早く、たくさん増やす。これががん細胞に向かっていくわけだ。

 これによってキラーT細胞が働き始め、すなわち免疫力が強化され、がん細胞を小さくしたり、増殖を食い止めたりすることができるという。もともと体内にあるものを利用するので、他の抗がん剤に比べて、副作用が少ない利点もある。

週刊朝日 2013年6月7日号