古田新太が体験した面白すぎる博多の「締め込み」バーの夜 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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古田新太が体験した面白すぎる博多の「締め込み」バーの夜

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神山典士著/今井一詞写真

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 俳優の古田新太さんは、福岡・博多で珍しいバーに立ち寄ったという。

*  *  *
 この間、USJとディズニーランドで大学生や高校生が裸になって、アトラクションを止めたり、悪ふざけを誇るようにネットに載せる行為が問題になった。悪ふざけをする時は、人に迷惑をかけちゃ駄目でしょ。人に不快な思いをさせても駄目でしょ。おいらも若い頃から悪ふざけは大好きだが、「偉業」ではないでしょ。

 おいらはカウンター席が好きだ。お店の人と喋れるからだ。暇な店の暇な時間帯に、「今日、脚つってさ!」「えっ、俺もですよ」「マジ、最近すぐつるんだよねー」「鉄分足りないんじゃないすか」「じゃ何、レバーとかほうれん草とかってこと」「まあ」「おいら毎日、レバーとほうれん草、ここで食ってるじゃん」「そうですよね」「でも鉄分足りてねえってこと」「いやわかんないっすよ。じゃ、ビタミンじゃないっすか」なんてどーでもいい、何の為にもならない時間を過ごすのが好きなのだ。

 随分前だが、行きつけのバーに仲間3人で出かけた。凄く静かな店で、渋いジジイが蝶ネクタイと黒ベストのいで立ちで、寡黙に立っている定番すぎるバーだ。

 仲間の一人がゴソゴソとベルトをはずしはじめた。理由はわからないが、ケツを出して止まり木に座ってマスターと話している。当然、おいら達も後に続いた。カウンター越しにマスターと野球の話をしたり、そのまま3時間ほど世間話をして「マスター、チェック」と言って立ち上がった。

 ズボンを直しているおいら達を、マスターは見て見ぬふりをした。「何してんだ、お前ら」ぐらい言えばいいのに。あー、やっぱり静かなバーに、大きな突っ込みは似合わないんだな。3人の男がプリンとケツを出して止まり木に座っている後ろ姿は、きっと面白かったと思う。ただそれだけである。

 そう言えば、博多に「締め込みバー」というのがあって、そこに入店すると「ふんどし」をつけなければならないルールがある。みんながみんな、締め込み姿で酒を酌み交わすのである。締め方がわからない人は、マスター自ら丁寧に締め込んでくれる。

 おいら達はワイワイ飲んでいたが、中には一人黙って締め込んで、カウンターで飲んでいる常連もいる。上半身シャツにネクタイ、下半身締め込みという格好だ。静かにグラスを傾けてモニターを見つめている。そこに映っているのは、全国の裸祭りである。シックな締め込みの男が、勇猛な締め込みの男達のビデオを見ながら水割りを飲んでいる。面白すぎる。マスターは締め込み姿の男が大好きで、日本中の裸祭りに出かけるらしい。締め込んだ男達の素晴らしさを、みんなに知って貰いたくて、このお店を開いたそうだ。お蔭で、全国の締め込みファンが集まる店になったとかで、知るか!

 基本的にカウンターに座ると、お酒や料理を作っている作業が見える。見事な捌(さば)きとか、たどたどしい動きとか、どちらも楽しい。

 行きつけのもつ焼き屋で、一番のド新人が焼き場に立っていた。おいらが注文すると、店長が睨む中、必至で焼きだした。「お待たせしました!」。串が出てきて意外なほどに旨かった。「意外に旨いぞ」、おいらが言うと、若造は「ヨシッ」とガッツポーズをした。これだからカウンターは止められない。
                                        
週刊朝日 2013年5月24日号


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